あわら温泉 支える労働力

無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

韓国人青年の奮闘に密着

 求人倍率が全国トップレベルで高止まりする県内で、外国人の派遣労働者が急増し、人手不足の業界を下支えしている。県を代表する温泉街「あわら温泉」(あわら市)もその一つ。採用難に陥った旅館で、貴重な戦力として奮闘する韓国人の青年に密着した。(大川哲拓)

 創業約60年で、あわら温泉でも170室を抱える大手旅館「清風荘」は毎年2~3人の新卒を採用し続けてきた。だが、昨年は、合同就職説明会に参加するなど例年通りに求人活動したにもかかわらず、初めて1人も応募がなかった。

 人手を確保しようと約10年前から人材派遣会社を通じて外国人を雇用し、現在は台湾と韓国からの計5人が働く。今春は、最長5年の就労ビザを取得するベトナム人とインドネシア人を、初めて正社員に採用する。

 内田諭総務部長(65)は「外国人労働者は欠かせない戦力。その才能を最大限に発揮するためにも、生き生きと、長く働き続けられる環境を整える」と力を込める。

「清風荘」派遣労働  周煥承(ジュファンスン) さん 29  旅館の顔 笑顔絶やさず

 「いらっしゃいませ」「お荷物お持ちしましょうか」――

 2月2日土曜午後4時半頃。周さんは「清風荘」の玄関前に立って、次々とチェックインする客に声をかけていた。時折、雨にぬれながら路上まで出迎えに走るが、笑顔は絶やさない。「ここでの仕事は旅館の顔。真面目にやらないと」

手際よく料理を運ぶ周さん(あわら市で)
手際よく料理を運ぶ周さん(あわら市で)

 韓国南部の金海市出身。日本の大学院への進学資金をためようと来日し、昨年10月から、人材派遣会社を通じて清風荘で働き始めた。

 チェックインが一段落した午後6時には、ウィンドブレーカーを脱いで和装に着替えた。カニ料理などの皿をカートに載せ、調理場から運び出す。宴会場に着き、「カニツメテン(カニの爪の天ぷら)六つです」と接客係に引き継ぐと、「ジュウ君、ありがとね!」と日本人の同僚がつけてくれた愛称で声がかかった。

 韓国の大学で日韓交流史を学んだ周さんは日本語が堪能だ。それでも、苦手な敬語は繰り返し練習している。「『ございます』と『いたします』の違いとかは今でも難しい」と笑う。

 料理の運搬中、「ノンアルコールビール一つ」と不意に女性客の声が響いた。注文を聞くのが仕事ではないため、少し動揺した様子だが、すぐに「はい、少々お待ちくださいませ」と応じる。スムーズに接客係に取り次ぐことができると、「練習通りにできた」とほっとした表情を見せた。

 つかの間の休憩時間は、スマートフォンで母国の両親や友人のメッセージを素早くチェックする。「やっぱり寂しい時もありますよ」とぽつり。近くの寮に帰ると、「LINE(ライン)」を使って、じっくりとやりとりするのが夜の楽しみだ。

 8時半に仕事が終わると「ジュウ君、お疲れ」と、先輩女性から焼き芋を渡された。「みんなすごく優しいから、楽しく働ける」と、うれしそうに食べながら日本の魅力を語ってくれた。

 大学時代の2013年春、旅行で初来日した印象を「言葉がうまく出てきませんが、『一生、日本に住みたい』と思いました」と振り返る。同年秋から、福岡県の韓国料理店で1年働いて帰国し、再来日で福井へ。無事に大学院に進めたら、日本で日韓交流史を教える大学教員になりたいという。「頑張ってお金をためて勉強もして、両国の懸け橋となるような仕事がしたい」

派遣 4年で5倍に

 県内の外国人労働者のうち、「職業紹介・労働者派遣業」に従事する人数が4年間で5倍近くに増えていることが、福井労働局のまとめで分かった。正規雇用に比べ、手続きが手軽に人材を確保できる利点がある。

 労働局が1月に発表したまとめによると、2018年10月現在で2558人に上り、14年に比べて約2000人増加した。統計上、派遣先の業種は分からないが、製造業やサービス業をはじめ幅広い業界に浸透しているとみられる。

 背景には、慢性的な人手不足がある。求職者1人当たりの求人数を示す有効求人倍率(季節調整値)は、18年12月で2・07倍と、14か月連続で2倍以上だった。都道府県別では、東京、広島に次いで全国3位だった。

 外国人労働者は全体的に増加傾向にあるが、就労ビザの発給手続きなどがハードルになる。派遣の場合は、こうした手続きを派遣業者に任せられるメリットがあり、近年広まった。

 あわら温泉の旅館でつくる芦原温泉旅館協同組合によると、ここ数年で派遣を含む外国人労働者が増加。前田健二副理事長(56)は「なり手不足は街全体の課題」とし、自ら社長を務める「美松」(68室)も2人を雇用する。

 ただ、派遣労働者には、契約時に決めた業務以外を任せることができないデメリットもある。

 「清風荘」の周さんの場合も、日本語が上達したが、フロント業などに回すことはできない。担当者は「今後も一定人数を派遣で確保しつつ、日本人と同じように働ける外国人正社員を増やしたい」と意気込む。

437136 0 ニュース 2019/02/09 05:00:00 2019/02/09 05:00:00 2019/02/09 05:00:00 手際よく料理を運ぶ周さん(あわら市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190208-OYTNI50081-T.jpg?type=thumbnail

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ