[道あり]カウンターテナー歌手 米良美一さん<5>映画主題歌に大抜てき

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 1990年、洗足学園音楽大学(川崎市)の音楽学部声楽専攻に入学した。地元宮崎では自分の体のことで色々言われたり、視線を感じたりしたが、都会では自分のことが全く知られておらず、一人暮らしやキャンパスライフを満喫した。

 大学では当初、テナーを学ぶつもりだった。テナーは男性歌手の声域としては高音だが、オペラなどでは女性歌手の腰に手を回して愛を歌うような役が一般的。プロのテナー歌手も国内外に数多く、「1メートル40そこそこの身長の自分がテナーをやっていても埋もれてしまう」と思っていた。

 その時に知ったのが、男性が裏声を使って高音を出すカウンターテナーだった。女性が教会で歌うことを禁じられた中世のヨーロッパで、男性が女性の声域で賛美歌などを歌うために生まれた歌手のパートだ。大学1年のときに同大の教授に披露したところ、「声ができあがっている」と驚かれた。

 カウンターテナーはバッハに代表されるバロック音楽で使われ、オペラでは天使や妖精のような中性的、神秘的な役が多い。カウンターテナー歌手は国内でも少なく、「自分がどういうキャラクターで生きていくのか考えた時、『これしかない』と直感した。唯一無二のプロ歌手になりたいと思った」。

 大学は首席で卒業。カウンターテナー歌手としての実力が認められ、卒業直後にバッハの楽曲を録音するヨーロッパでのプロジェクトに参加。CDを制作した。96年からはオランダに留学。バロック音楽を学んだ。

 アニメ映画「もののけ姫」の主題歌を担当するよう依頼を受けたのはこの頃だ。宮崎駿監督がラジオから流れる歌を聴き、声をかけることになったと制作者側から連絡があった。宮崎監督作品の映画「風の谷のナウシカ」なども見たことがあり、快諾した。

 97年6月、「もののけ姫」が完成し、東京で開かれた記者会見で主題歌を歌った。スポットライトを集め、無数のカメラのフラッシュを浴びた。大抜てきの末の晴れやかな舞台だったが、感じていたのは強い戸惑いと、「自分の過去が知られてしまうのでは」という恐怖だった。

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