[こおりやま広域圏 5月] 「越境職員」奮闘続く
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16市町村からなる「こおりやま広域圏」の調整役を担う郡山市の政策開発課で、田村市の職員が4月から働いている。圏内の自治体の壁を越えて派遣された「越境職員」の第1号だ。
「郡山市役所で広域圏の仕事に関わってみないか」
田村市教育委員会に勤務していた入庁7年目の桜田香澄さん(30)のもとに、今年3月、人事係から声がかかった。
桜田さんは昨年度、圏内の若手職員が集まって地域の課題解決を目指した「チャレンジ『新発想』研究塾」の参加メンバーだ。毎週のように他の自治体の職員たちと交流し、考え方や仕事の進め方の違いを知るのは刺激的だった。初の越境職員になることに不安もあったが、「これもいい経験になるだろう」という予感があった。
「広い視点で広域圏を見渡し、ぜひ様々な業務に挑戦してほしい」。田村市総務部の志田健久主幹(46)も、期待を込めて送り出した。
働き始めて1か月半。田村市役所との一番の違いは「机のきれいさ」だという。電子決裁の導入が進む郡山市役所は、書類をまとめたファイルが田村市より少なく、どの部署の机の上もすっきりしている。
週の初めのミーティングでは、誰が何の仕事をしているか、どこまで進んでいるのかを共有する。それだけで職場の風通しがよくなることも発見だった。「田村に戻って生かせるかもしれない」と思った。
業務としては、災害時に相互支援するための体制づくりや、自治体担当者との意見調整などを任されている。どれもなじみのない仕事で「失敗ばかりです」と本人は言うが、高橋勇介係長(44)は「作ってもらう資料も完璧で、もうすっかり頼ってしまっている」。周囲の信頼は厚い。
名乗る時、いまもたまに「田村市の……」と言い間違えそうになる。「郡山市政策開発課」と自然に出るのはいつになるか。桜田さんの奮闘は続く。(井上大輔)