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定点観測連載「いま ここから」

[浪江町津島 9月] カルタでたどる古里

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シラスの水揚げを見学する嘉人君(中央)(浪江町の請戸漁港で)
シラスの水揚げを見学する嘉人君(中央)(浪江町の請戸漁港で)

 漁船が続々と戻り、昼前の港は活気づいていた。水揚げされたシラスが日に反射してきらきらと光る。

 二本松市にある浪江町立津島小の総合学習の時間。たった一人の児童、小学6年の須藤嘉人君(12)は、マイクロバスで往復3時間の請戸漁港に来ていた。浪江を題材にした「なみえっ子カルタ」の舞台をたどる2度目の校外授業だった。

 「つり糸を たらして待った 請戸港」

 津島小と浪江小の先輩たちが作った「つ」の読み札に、そう歌われている。絵札には岸壁の釣り人と青々とした海。カルタの情景はどれも、震災当時2歳だった嘉人君が見たことのない景色ばかりだ。

 今春再開した市場に魚が手際よく次々と運び込まれていく。「シラスの他に何が取れるんですか」と嘉人君が質問し、相馬双葉漁協の職員はヒラメやカレイを挙げた。嘉人君が熱心にメモを取り、様子をスケッチする。同行した木村裕之校長(54)をはじめ教職員5人も、興味深そうに耳を傾けた。

 近くの岸壁から実際に釣り糸も垂らしてみた。サバやアイナメ、アジ、フグなど約30匹が次々とかかり、大はしゃぎだった。

 来春いよいよ145年の歴史を終える津島小にとって、嘉人君は最後の卒業生になる。帰還困難区域にある津島には今も立ち入れないが、古里に誇りを持って巣立ってほしい。そのためにも、「インターネットや写真を通してではなく、浪江の景色を自分の足で歩き、目で見ることが大事」だと木村校長は考える。

 漁港周辺を見渡せる市場の屋上で、木村校長はタブレット端末を取り出して画像を見せた。漁港が壊れ、がれきがあふれている。津波が押し寄せた直後の請戸地区の風景だった。食い入るように画像と眼下の景色を見比べ、「あちこち工事をしてきれいになったんだね」と嘉人君は言った。

 家々があった場所は更地と化している。漁港がにぎわいを取り戻したところで、かつての人の暮らしは戻らない。それもまた、この町の復興の一断面だった。

 嘉人君は今後もカルタの舞台を訪ね、学習したことを冊子にまとめる予定だ。(石沢達洋)

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1500179 0 いまここから 2020/09/25 05:00:00 2020/09/25 10:23:00 2020/09/25 10:23:00 請戸漁港でシラスの水揚げの様子を見学する須藤君(8月28日午前10時7分、浪江町請戸で)=石沢達洋撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200925-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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