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定点観測連載「いま ここから」

[奥会津 10月] 消えゆく技術 集めて

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 昭和村の分校の廃校舎。2階の教室が、寄贈された民具の収蔵庫になっていた。

 かんじき、ゴザ、臼、くわあたりは見たことがあるが、用途がまるで想像つかないものも並ぶ。家人がいなくなり、空き家を解体するたびに大量に運び込まれる。未整理分を含めると1800点。人口減がもたらす風景がここにもある。

「先人の細やかな工夫にいつも感心します」。糸車を調べる押部さん(昭和村で)
「先人の細やかな工夫にいつも感心します」。糸車を調べる押部さん(昭和村で)

 村教育委員会で民具の整理作業を担当する地域おこし協力隊の押部僚太さん(32)は、一昨年に村に来るまでの11年間、岐阜県で大工をしていた。採寸、分類し、村民から使い方を聞き取る。依頼があれば、現役で使われている民具の修理も引き受ける。

 大工の目で見ると、どの民具からも先人の試行錯誤が伝わってくるという。たとえば、からむしの糸作りに欠かせない「糸車」。材料は乾燥してもゆがまない丈夫なホオノキで、駆動部はわらをクッションのように当てている。ハンドル部分は端が太く、手に吸いつくような握り具合だ。「いろんな人が使い勝手を追求し、長い年月をかけて形状や寸法が定まっていったことがわかる。修理していると、自分もその歴史の末端に連なって共同作業をしている感覚になります」

 観光拠点施設・喰丸小でもう一人、民具への愛情を熱く語る人に出会った。押部さんの前任の民具担当、水野江梨さん(43)だ。愛知県出身で、村のからむしの研修生「織り姫」として8年前に移住した。

「コウシキベラ」を見上げる水野さん。長さ2メートル以上あり、雪下ろしに活躍した
「コウシキベラ」を見上げる水野さん。長さ2メートル以上あり、雪下ろしに活躍した

 水野さんいわく、民具を集めた資料館なら全国にある。「でも、それを実際に使える人、作れる人がまだ残っているのが昭和村のすごいところ」と語る。

 80代の男性にムシロ作りを実演してもらった時のことだ。藁をぬらして軟らかくするために、男性は霧吹きの代わりに水を口に含み、ぷーっと吹きかけた。

 「やってみようと皆で挑戦したけど、水がダラダラこぼれて全然うまくいかなくて」。ひとしきり皆で大笑いしてから、水野さんは気づく。少し前までは、こんなふうに人の体も道具の一部だった。民具を知ることは、いつのまにか私たちが失ってきた能力を知ることでもあると。

脱穀機
脱穀機
ワラスグリ
ワラスグリ

 あと10年もたてば技術を知る人はいよいよ減り、廃校舎は民具の山であふれかえるのだろう。(高倉正樹)

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1582047 0 いまここから 2020/10/26 05:00:00 2020/10/26 05:00:00 2020/10/26 05:00:00 村に寄贈された糸車を調べる押部さん。「使い手が自分で微調整できるよう設計されている。先人の工夫に感心します」(10日、昭和村で)=高倉正樹撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201027-OYTAI50002-T.jpg?type=thumbnail

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