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定点観測連載「いま ここから」

[浪江町津島 11月] 偏見の心理 向き合う

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 同じ福島県内なのに、震災のことになると感じ方にズレが生じる。そのことを中島綾香さん(18)はずっと考えてきた。

 最初に抱いた違和感は小学生のころに友達と交わした会話だった。中島さんの自宅は帰還困難区域の浪江町下津島にあり、8歳だった小2の春以来、帰ることができない。避難先の福島市のプレハブ仮設住宅は少し窮屈だったが、友達はすぐにできた。「家に戻ってみたいんだよなあ」と何げなく話すと、友達は「私たちはあの時、停電したくらいだからよく分からないな」と言われた。悪気のない口調で「お金はいくらもらっているの」と聞かれたこともあった。

 経験したことは人それぞれだと分かっている。小学校はアートクラブ、中学では美術部やバレーボール部。充実した日々を過ごしながら、ふとした時にズレを感じた。違和感の正体をもう少し知りたくて、広野町の県立ふたば未来学園高校に進んだ。

 中島さんには発達障害のある兄がいる。兄と一緒に過ごしてきて、障害者をめぐる状況と福島が置かれている現状はどこか似ている、と感じていた。生徒が課題を決め、解決方法を考える「未来創造探究」の授業で、このことをテーマに選んだ。

 フィールドワークの一環として、障害者との交流イベントに同級生たちを招いた。普段は関わりが少ない人たちが、終了後、そろって「また遊びたい」と前向きな感想を語った。

 障害者への偏見も、被災地に対する誤解や無関心も、根っこは「知らないこと」にある。知らないことでも自分ごととして捉えると理解が進む。だから、大事なのはまず体験してみることではないか。

「風評をなくすために自分に何ができるか、さらに研究したい」と語る中島さん(県立ふたば未来学園高校で)
「風評をなくすために自分に何ができるか、さらに研究したい」と語る中島さん(県立ふたば未来学園高校で)

 授業の集大成として中島さんはカルタを作った。読み札に、震災や原発事故についての正しい情報と間違った情報をわざと交ぜてある。遊びという体験を通して、物事の真偽を改めて考えてみてほしい、という意図を込めた。

 昨夏、両親と事故後初めて津島の自宅を訪れた光景がよみがえる。

 防護服を着て約2時間。栗を拾った家の裏の土手や野菜の収穫を手伝った畑は荒れ果て、草木に覆われていた。悲しい気持ちになったが、懐かしくもあった。「また行きたいなと思うんです」。深い理由はない。

 まもなく10年。気づけば津島にいた歳月より避難生活の方が長くなり、進路を選ぶ時期に差しかかっている。来春大学に入ったら心理学を勉強してみたいという。(石沢達洋)

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1654303 0 いまここから 2020/11/19 05:00:00 2020/11/19 05:00:00 2020/11/19 05:00:00 風評被害などについての研究を説明するを中島さん(10月29日午後6時56分、広野町中央台の県立ふたば未来学園高校で)=石沢達洋撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201126-OYTAI50005-T.jpg?type=thumbnail

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