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[福島大学 11月] 被災標本 救いたい

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水没した植物標本の修復作業にあたる黒沢教授(20日、福島大で)
水没した植物標本の修復作業にあたる黒沢教授(20日、福島大で)

 厚紙の上に、植物の標本が保存されている。かぶせてある当時の新聞紙を慎重にめくると、かすかに泥の臭いがした。

 福島大学研究実験棟の実験室。共生システム理工学類の黒沢高秀教授(55)は全国の研究者たちと手分けして、7月の九州豪雨で被災した標本の修復に取り組んでいる。

 豪雨被害の直後、自然史系の学芸員や研究者らが登録するメーリングリストで、貴重な標本が多数水没したという一報が回ってきた。熊本県人吉市で球磨川が氾濫し、博物館が浸水。そこには、南九州の植物研究で重要な文献「南肥植物誌」の著者・前原勘次郎(1890~1975年)が採集した約3万3000点が含まれていた。

 黒沢教授の専門は植物分類学。本務は、新種の植物を見つけて発表したり、図鑑を執筆したりすることだ。一方で、水没資料のレスキューに関しては、津波をかぶった岩手県の陸前高田市立博物館、昨年の台風19号被害などを立て続けに経験し、ノウハウを積んでいる。今回も修復作業への協力を名乗り出て、約700枚、段ボールにして10箱分を引き受けた。

 腐敗が進まないよう、標本は3~4度に保たれた別棟の冷蔵施設で保管している。水分を吸い取る新聞紙を3、4回交換し、乾燥機で殺虫・殺菌処理を行えば完了だ。

 分類するラベルが見当たらない標本もある。「水没した時に流れてしまったかもしれないな。これはスブタ(水草の仲間)かな」とつぶやきながら作業を進める。包んである新聞は大正時代の日付で、細い葉がちぎれないよう剥がし、不織布を挟んだ後、「この新聞も貴重な資料かもね」と紙面を興味深そうに眺めてから戻した。

 それにしても、1世紀も前の標本をなぜこれほど大事に扱うのか。「植物標本は適切に保管すれば300年はもつんですよ」と黒沢教授はいう。「人の開発で、里山の環境はどんどん変化する。これらは人の手が加わる前の植物状況を知ることができる実証的な資料で、失われるともう戻らない。だから、なんとかきれいに戻してあげたい」。言葉に力がこもった。(山元麻由)

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1654453 0 いまここから 2020/11/26 05:00:00 2020/11/26 05:00:00 2020/11/26 05:00:00 水没した植物標本の修復作業をする黒沢教授(福島市金谷川の福島大で)=山元麻由撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201126-OYTAI50011-T.jpg?type=thumbnail

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