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[南相馬市 11月] 寺社巡り 深める復興

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津波で押し寄せたがれきを防いだ御刀神社の鎮守の杜
津波で押し寄せたがれきを防いだ御刀神社の鎮守の杜

 津波で100戸以上が更地になった南相馬市鹿島区の右田地区に、ぽつんと木々が茂る場所がある。平安時代の905年創建、御刀みと神社だ。

 あの日、がれきが波に乗って押し寄せたが、鎮守のもりのおかげで背後の家々は無事だった。境内のほこらも持ちこたえた。須藤栄治さん(48)はその光景に、人知を超えた力強さを感じている。

 原町区で飲食店を営みながら、須藤さんは地域のにぎわいの再生が進まず、悩んでいた。「復興を願う」と誰もがよく口にするが、いったい誰に願っているのだろうと、引っかかってもいた。意識して地元の寺社を回るようになったのは、人々の願いをこうした場所が受け止めてきたことに、はたと気づいたからだ。

 ある神社は人の足が途絶え、参道にクモの巣が張っていた。氏子や檀家だんかが減っている、と嘆く関係者もいた。いくらインフラが復旧しても、これで復興といえるのか。須藤さんは案じた。

 5年ほど前、JR鹿島駅の近くで旅館と居酒屋をやっている桑折祐一さん(51)と知り合った。

 桑折さんの実家は銭湯で、小学生の時、よく父から番頭を任された。番頭部屋のこたつは暖かく、つい居眠りしてしまう。「常連客はそっとお金を置いて帰っていく。つくづくいい時代だった」。2人は酒を交わして意気投合した。

 震災後、鹿島も原町も商店街は寂れてしまった。人の流れを取り戻すために、地元の神社仏閣のスタンプラリーをしたら、と須藤さんは提案した。スタンプを集めると地元の農産品が当たる抽選をすれば、参加者も喜ぶだろう。

寺社をめぐるスタンプラリーを企画した須藤さん(左)と桑折さん(20日、南相馬市鹿島区で)
寺社をめぐるスタンプラリーを企画した須藤さん(左)と桑折さん(20日、南相馬市鹿島区で)

 2人が中心となって設立した任意団体が昨秋企画したイベントは好評で、300人近くが参加してくれた。コロナ禍の今年は疫病退散に関連する寺社を選び直し、さらに内容を充実させた第2弾を30日まで実施している。

 地域の歴史を学んで気づかされることは多いと須藤さんは感じる。相馬家の家紋「九曜紋」を掲げる寺社は、相馬中村藩領だった大熊町から相馬市、飯舘村まで150以上も残っている。それに比べれば、原子力発電所を中心に同心円状に引かれた線も、避難指示の有無で生じた目に見えない壁やあつれきも、10年弱の出来事に過ぎない。

 「復興って、目の前の果実を追う面がどこかある。そうではなく、自分たちの土地の根っこをもっと掘り下げてみたい」。大事なことは意外と近くにある、と2人は思い始めている。(柿井秀太郎)

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1654407 0 いまここから 2020/11/25 05:00:00 2020/11/25 05:00:00 2020/11/25 05:00:00 鹿島区の寺社をめぐるスタンプラリーを企画した桑折さん(右)と須藤さん(20日午後0時25分、南相馬市鹿島区の魚菜料理「万葉亭」で)=柿井秀太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201126-OYTAI50015-T.jpg?type=thumbnail

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