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定点観測連載「いま ここから」

[浪江町津島 12月] 160年の営み途絶えて

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 二本松市で避難生活を送る福島衛治もりじさん(74)は昨年秋、浪江町津島にあった先祖の墓を二本松に移した。「墓の世話をしてくれる息子たちの負担を考えると、こうするしかない」。苦渋の決断だった。

 記録によれば、先祖が津島の羽附はつけ地区に住むようになったのは、幕末の文久元年(1861年)。相馬藩の政策の一環で現在の富山県から入植して以来、土地を代々守り継いできた。7代目の衛治さんは最近では珍しくなった葉タバコの専業農家だった。

 葉タバコ栽培は春から夏にかけてが忙しい。3月から地元農家と共同で苗を育てる。4月下旬、妻のトミ子さん(73)のほか、アルバイトを5、6人雇い、その苗を3日かけて1ヘクタールほどの畑に植えていく。

 収穫が始まるのは6月中旬。葉を縄に挟んで日陰干しすると、乾燥するにつれて緑から赤、茶色に変わる。台に広げ、腐っている葉をはじいて出荷すると1キロあたり2000円ほどの値がついた。

 冬は木の葉を拾って肥土を作り、また春を迎える。阿武隈山地の集落で、こうして自分も静かに年を重ねていくのだろうと信じて疑わなかった。

 あの年、苗を育てる種はまいたが、それを畑に植えることはかなわなかった。

 いまも月に数度、羽附の自宅に戻る。ただ、戻っても、除草剤をまいて家の周囲をきれいにするくらいしかやれることはない。2014年秋、仮設住宅から少し離れた二本松の中古住宅を求めて移った。趣味の盆栽に興じるのが、ささやかな楽しみだ。

福島さんの畑には白菜がよく育っていた(11月18日、二本松市で)
福島さんの畑には白菜がよく育っていた(11月18日、二本松市で)

 畑では少しだけ野菜を作っている。道具を全て自宅に置いてきたから、葉タバコの栽培はもうできない。

 衛治さんは羽附地区の行政区長でもある。年に2回、行政区の総会と小旅行で、ばらばらになった30世帯ほどの住民に声をかける。「いつも25世帯くらい集まる。古里とのつながりを感じることができる貴重な機会なんだ」と語ってから、「最近な、津島に戻ることへのあきらめの気持ちが強くなってきた」。ぽつりと言った。(石沢達洋)

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1719289 0 いまここから 2020/12/17 05:00:00 2020/12/17 05:00:00 2020/12/17 05:00:00 自宅前の畑で白菜を育てる福島さん(11月18日午後3時14分、二本松市平石高田で)=石沢達洋撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201222-OYTAI50001-T.jpg?type=thumbnail

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