[福島大学 12月] 学生の食 支える責任
完了しました

新型コロナウイルスの影響で、福島大学金谷川キャンパスにある生協の食堂の風景は一変していた。
メニューはテイクアウトのみで、保温器に並ぶカレーや唐揚げ弁当などから選ぶ。1メートルほど間隔を空けたテーブル席は対面の椅子がなくなり、学生たちはみな同じ方向を向いて静かに食事をしている。
一角に、食堂らしからぬコーナーがあった。冷蔵の棚に卵、チーズ、ハムなどの生鮮品を置いている。授業終わりに、ついでに買って帰る学生が多いという。売店では5年保存のカレーやパスタといった備蓄食も充実していた。

大学そばの学生寮や近隣のアパートに住む学生は700人ほどいる。「キャンパス周辺で暮らす学生が孤立しないように工夫しています」と大学生協の山田寛事業部長(59)は言う。
昨年の台風19号で浮き彫りになったのは、食料の調達に関してはキャンパスが「陸の孤島」になるという事実だった。近くにスーパーがなく、コンビニも遠い。台風で1週間ほどJR東北線が止まると、「買い出しに行けない」と困惑する学生たちが生協に押し寄せた。売店には日持ちのしないサンドイッチやおにぎりしかなく、すぐに売り切れてしまった。
この教訓から、緊急事態宣言が終わって授業が再開された5月中旬、生協も売店と2階の別の食堂の営業を早々と開始。オンライン授業のため学生は少なく、利用者は前年のわずか5%という状態でも、学生寮で感染者が出た9月の2週間を除いて一度も閉めなかった。対面授業が復活した10月1日からは1階の食堂もオープンし、利用者は前年比6割ほどに戻っている。
山田さんは、生協に対する保護者の関心の高さを肌で感じる。野菜のメニューを増やし、お礼の手紙を受け取ったこともある。
「生協のスタッフは、わが子の食事を遠くから気に掛ける親の代わり。『食料ちゃんと買っとけよ』と声をかけるけど、学生だから難しい。何があっても生協は営業を続けるしかない」。コロナ禍でも学生の食生活を支え続ける責任を山田さんは感じている。(山元麻由)