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定点観測連載「いま ここから」

[相馬双葉漁協 1月]浜の母さん 苦節50年

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 夫や息子が船を出し、妻や母は浜の仕事を一手に引き受ける。昔からの漁の役割分担で、女性たちは「船迎え」と呼ばれる。

 相馬市の松川浦漁港。15日の昼過ぎ、菊地基文さん(44)の清昭丸(19トン)が底引き網漁から戻ってくると、母の悦子さん(71)らゴムガッパ姿の5人が駆け寄った。

 男たちの作業は、魚が詰まったタルを港に揚げるまで。ここから先は船迎えの出番だ。フォークリフトでタルを100メートル先の市場へ運び、魚を床に広げる。手にしたカギ棒を器用に使い、魚種ごとにカゴに仕分けていく。

 「ここからが大事なの」

 アナゴは頭の向きをそろえる。アカガレイは赤い腹の部分が見えるように。「高く売るためには見た目が重要。うちの並べ方はこの浜で一番なんだ」と悦子さんが言う。競りの開始まで30分しかなかったが、手慣れた5人の息はぴったりだ。最後に塩水でウロコやぬめりを流すと、魚はつややかに輝いた。

 「浜のかあちゃん」のキャリアは長い。3代目の船長だった清照さんと1971年に結婚して以来だから、そろそろ50年になる。夫が51歳で亡くなった後も、5人の子どもを育てながら働いた。津波で自宅が流されたが、試験操業が始まるとすぐに浜に戻った。

 今も昔も楽しみは休憩室の世間話。悦子さん手作りの焼き餅や漬けものを囲む。冷えた体に、温かいお茶が染みわたる。

 「コロナの影響で魚価がだいぶ安い。4月に本操業が始まって水揚げが増えたとしても、本当に売れっかね」。心配事は尽きない。

 船迎えの仕事はしゃがんだり立ったりの繰り返しで、力も要る。いつの頃からか、膝がずきずきと痛むようになった。若い頃は簡単に持ち上げていた30キロのタコも、今は2人がかりでやっとだ。

 女性陣の最年少は基文さんの妻明日香さん(43)だが、3人目の子が生まれ、復帰して間もない。「おかあさんが来てもらわないと困る」と何かと頼られる。「孫たちが大きくなって、もう来なくてもいいよって言われるまでがんばらなくちゃ」。悦子さんは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。(仲田萌重子)

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1837206 0 いまここから 2021/01/25 15:00:00 2021/01/25 15:00:00 2021/01/25 15:00:00

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