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[浪江町津島 1月]90歳宮司「復興めざす」

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 12世紀の創建と伝わる浪江町の津島稲荷神社。宮司の井瀬信彦さん(90)は原発事故以来、氏子らの求めに応じ、戻れなくなった家の解体や避難先の家の再建で、安全祈願の祝詞を上げ続けている。

 最初のころは「いつかは帰るんですか」と家主に尋ねていたが、次第に聞くこともなくなった。帰還の見通しが立たず、帰りたくても帰れない。そんな避難者の苦境をあえて語らせることが、心苦しく感じるようになったからだ。

 記録によれば津島稲荷の17代目宮司にあたる井瀬さんは、神職の後継ぎがいない町内外16社の宮司も兼務する。安全祈願で呼ばれる範囲は広く、双葉郡を中心に県内外に及ぶ。

 自身も約6年半の仮設住宅生活を経て、今は福島市内の中古住宅で息子の信宏さん(58)と暮らす。津島稲荷までは車で1時間。2人で月に2回ほど足を運び、社殿を掃除し、祈祷(きとう)してから戻ってくる。

 8人きょうだいの長男。幼少期は多くの人が戦勝祈願で出征前に訪れたことを覚えている。中には戦死して戻らなかった人もいた。終戦の日は農業学校で同級生たちと玉音放送のラジオを聞いた。

 戦後は満州(現中国東北部)からの引き揚げ者らが続々と津島に入った。井瀬さんも2ヘクタールほどの田畑を耕し、住民たちと収穫を喜び合った。新旧どちらの住民にとっても神社は心のよりどころであり、収穫祭や初詣を通じて交流する場だった。

 原発事故はそんな住民と神社の関係を一瞬で断ち切った。創建900年で最大の危機に直面していることは間違いない。

 神社がある一帯は、2年後の優先的な避難指示解除をめざす特定復興再生拠点区域(復興拠点)にあたる。神社の境内も昨年秋から国の除染が始まり、それに合わせて地震で壊れた鳥居の修理や駐車場の整備に着手することになった。

 「神社は土地と一体化して地域を守る役割があり、その場所に立っていることに意味がある。たとえ住民が一人も帰還しなくても、存続してほしいと願う人がいる限り、神社の復興をめざします」。井瀬さんは力強く語った。(石沢達洋)

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