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定点観測連載「いま ここから」

[南相馬市 1月] 生の言葉 歴史になる

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 〈天地ひっくりげぇるぐれぇの揺れでな、ほのあとはぁ、海、こっちゃおっしょせて来でぇ……原発爆発しちまって、てんでに逃げるしかねがったど〉

 南相馬市鹿島区の八坂神社に、生々しい言葉を刻んだ石碑がある。立てたのは震災の翌年。被災の経験を後世に伝えるべく、倒壊した垣根を修復した氏子たちが文言を練った。

 3月6日に市博物館(原町区)で始まる企画展「南相馬の震災10年」は、この碑文にもとづいて展示を構成している。「復興が進む今だからこそ、当時の言葉に立ち戻りたいと考えた」と二上(ふたかみ)文彦学芸員(47)は語る。

10年で初の震災展

 博物館では震災10年にして初めての震災展になる。多様な見方がある現在進行形の原発災害を、公共施設が扱うべきか――。震災展が各地で企画される中、二上さんたちはそんな難しさを感じ、ためらってきたところがある。

 しかし、この間、被災者の高齢化は進み、地域コミュニティーは消失する一方だった。「100人いれば100通りの物語があって当然」。学芸員8人で議論を重ね、震災から間もない日記、ラジオ番組、新聞記事などを丹念にあたって被災者を掘り起こすことになった。

 首都圏に向かったある避難者は、震災の2週間後、「ヒマワリを植える夢をみた」と日記につづっていた。混乱の中、ヒマワリに除染効果があるという不確かなうわさが広まっていた頃だった。

 震災の爪痕を残す史料も並べる。津波に耐え、2017年に伐採された「かしまの一本松」の痛々しい樹皮。避難指示で小高区の牛舎に取り残された乳牛がかじって細くなった木の柱……。

 生き証人が絶えても、被災の痕跡や書かれた言葉は残り、やがて歴史になる。二上さんがその確信を深めたのは、専門としている相馬野馬追の研究を通してだった。昨年は新史料を手がかりに、太平洋戦争中も敢行された野馬追の様子を明らかにした。コロナ禍で無観客になっても開催する。人々の気概が今も昔も変わらないことを伝える企画展を開き、好評を博した。

 震災の時系列の回顧は、市教委が編む記録誌が担うことになる。これに対し、博物館の役割は、限られた展示スペースの断片的な展示物や言葉から、訪れた人に想像をめぐらせてもらうことだと二上さんは思っている。

 会場の出口には、感じたことを自由に記すコーナーを設ける。それもまた、被災地の10年目の言葉として歴史の一部になっていくのだろう。(柿井秀太郎)

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