[南相馬市 2月] 広報 伝わる言葉で
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アメリカ出身の若者2人が南相馬市役所に新鮮な風を吹き込んでいる。昨春に着任した秘書課広報広聴係のジョアナ・リードさん(25)、ナサニエル・ハイムズさん(27)。広報文を英訳し、市内の外国人に伝えることが主な仕事だ。
リードさんがカリフォルニア州、ハイムズさんはオレゴン州と、どちらも西海岸で生まれ育った。学生時代に日本語を学び、2017年の夏、ALT(外国語指導助手)として赴任した南相馬で出会った。
リードさんは常磐線で初めて南相馬に来たとき、車窓越しにきらきら輝いていた田んぼが忘れられないという。時刻を告げる防災無線のサイレンは慣れるまで往生した。災害が起きたと勘違いして外に飛び出し、近所の人に驚かれた。
ハイムズさんの故郷は山のそばの小さな町で、海も近い。最初の勤務先だった小高が落ち着くのは、太平洋を挟んだ古里に似ているからだと気がついた。
市内には454人の外国人が暮らす。アジア圏が多く、英語圏出身者は2割ほど。そこで広報文は英訳に加え、難しい漢字の熟語などを使わない「やさしい日本語」でも発信している。
異国生活の不安を和らげるための情報提供は、コロナ禍でますます重要になっている。感染拡大防止に協力を求める市長メッセージをめぐり、2人は議論を重ねた。「自粛」の英訳は、ニュアンスは少し違うが「refrain from(~をやめる)」。やさしい日本語で「
上司の藤原道夫係長(46)は「2人の仕事ぶりに刺激を受け、普段の文章も分かりやすい日本語を心がけるようになった。外国人に伝わる言葉遣いは誰にとっても伝わりやすいことを実感した」と話す。
リードさんは方言にも興味がある。「あっぱとっぱする」(慌てふためく)という魅力的な言葉を知り、たまに使ってみる。
10年前の春はどちらもアメリカの高校生。津波や原発事故のニュースで、「フクシマ」の地名を何度も耳にしたが、どこか遠い響きがあった。いまは知り合いも増え、親しみがわいている。もっと長く住んでいたい、今年の夏は願わくば北泉海岸でサーフィンでもしてみようか、と語り合っている。(柿井秀太郎)