[こおりやま広域圏 10月]藤沼湖決壊、語り継ぐ

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 東日本大震災で死者・行方不明者8人を出した須賀川市の農業ダム「藤沼湖」の決壊。この悲劇を後世に伝える語り部が14日、デビューした。長沼高校3年の五十嵐夏菜さん(18)。地元の長沼小学校と長沼東小学校の4、5年生約60人を前に約20分間、命の大切さと災害の恐ろしさを語りかけた。

 「ダムから流れ出した水は川に沿って流れ、長沼小学校にも50センチぐらいの高さまで押し寄せてきました」。五十嵐さんは藤沼湖を前に、10年前の記憶をたどるように話した。当時、長沼小1年。校庭に迫ってきた濁流から必死に逃げた。

 昨夏、県内の高校生が震災の語り部をしていると知り、「震災を知る最後の年代として地元の被害を風化させたくない」と被害について調べた。藤沼湖の決壊を語り継ぐ唯一の語り部として活動を始めた矢先、新型コロナウイルスの感染が拡大。人前で話す機会はなかったが、被災した住民への聞き取りや資料集めは続けた。

 デビュー決定後、五十嵐さんは小学生でも理解できる内容にしようと準備を進めた。長沼小6年の弟に意見を聞きながら用意した高さ約50センチの段ボール箱を使い、クイズを織り交ぜながら飽きさせない工夫も。そのかいあって、児童はメモを取り、最後まで話を聞いてくれた。

 初めての活動を見守った長沼高の浜田潤子教諭は「何をどうやったら伝わるかまで考えて試行錯誤をくり返した成果が出ていた。こうした若者から若者への記憶の伝承は続いていってほしい」と話した。

 五十嵐さんは「すごく緊張したけど、子どもたちの反応を見て安心した。話を聞いた子たちの中から、新しい語り部が生まれてくれるとうれしい」と充実感を漂わせた。

 ようやく第一歩を踏み出したが、大切なのはここから。母校は来春、市中心部の高校と統合され校舎も移る。地域の交流拠点の一つがなくなることで、地元から子どもがいなくなり、記憶の風化が進むかもしれない。だからこそ、五十嵐さんは繰り返し訴える。「帰ったら家族の人と震災の話をしてみてください。それが歴史を伝えるということです」(井上大輔)

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