[双葉町 10月]11年ぶり初穂奉納

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再建した神社で初穂奉納の儀式を行う高倉さん(11日、双葉町で)
再建した神社で初穂奉納の儀式を行う高倉さん(11日、双葉町で)

 「実の数はまだ少ないんだげどよ」

 「茎が細いような感じがしますが、ずいぶん実ったんですね」

 福島第一原発から約4キロ離れた双葉町の初発神社で11日、初穂が11年ぶりに奉納された。宮司の高倉洋尚さん(59)は、米を持ち込んだ地元の農地保全管理組合長の木幡治さん(70)に感慨深げに語りかけた。

 秋になれば町内のあちこちを黄金色に染めていた稲穂が消えて10年余り。かつての景色を取り戻そうと、原発事故後、初めて町内の帰還困難区域で試験栽培された米だ。高倉さんは祝詞を上げると、氏子でもある木幡さんらが玉串を奉納し、収穫を祝った。

 神社は江戸時代に創建された。JR双葉駅から歩いて2分の場所にあり、以前は夏祭りや七五三といった季節の行事のたびに多くの人たちが訪れた。10月になると、地元の農家や近所の住民が初穂として稲穂や精米を持ち寄り、収穫の喜びと感謝を共有し翌年の豊作を願った。神社は住民の心のよりどころだった。

 原発事故で町全域に避難指示が出され、高倉さんはご神体とともに県内外の避難先を転々とした後、いわき市に落ち着いた。市内の神社などで神職を続けながら再建の機会をうかがい、2019年に氏子の協力を得て、地震で大きく傾いた社殿を修繕。20年3月に町の一部の避難指示が解除され、神社周辺の立ち入り規制が緩和されると、1週間の半分はいわき市から通って町で過ごすようになった。「建物を直しても、人がいないことには何も始まらない。町を訪れる町民の話し相手になれれば」

 来年6月にも、神社周辺を含む特定復興再生拠点区域(復興拠点)で避難指示が解除され、住民の帰還がようやく始まる。ただ、住民が自宅を解体する度におはらいに出かけ、古里が更地になっていく様子を何度も目の当たりにし、言いようのない寂しさを感じてきた。「一日中神社にいても、誰とも話さないこともある。農業という 生業なりわい が復活して、人が戻るといいが」。奉納された米と神社周辺の街並み。双方を見て期待と不安が交錯し、高倉さんは声を詰まらせた。(山元麻由)

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