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学法石川高ハンドボール部
小針 昇真
さん
学法石川高校ハンドボール部主将の小針昇真さん(17)にとって、この夏のインターハイは祖父、父に続く親子3代の全国大会出場がかかっていた。今年2月の東北大会は2位。全国選抜の出場権を獲得していた。
全国選抜に次いでインターハイの中止も決まったとき、本人は「やっぱり」と冷静だった。父を全国に連れていきたかったが、仕方ない。
父で同部監督の竜之さん(48)は、小学生のころから昇真さんをよく遠征に同行させた。部員たちも「昇真、また来たのか」とかわいがってくれた。学法石川は全国の常連で、大舞台で堂々と戦う姿は憧れの的だった。自身もハンドボールを始め、父が指導する強豪に進学を決めたのは、自然な流れだった。
父と子が、チーム内では監督と選手の立場になる。それはそのまま約30年前の竜之さん自身の姿でもあった。昇真さんの祖父にあたる三夫さん(2010年死去)は同校を全国常連校に育て上げた名将だった。厳しい指導の下、竜之さんも全国大会に3度出場。3年時には主将として全国大会ベスト8に輝いた。
三夫さんにならい、竜之さんも公私の区別を徹底し、学校では敬語を使わせた。息子のことを他の選手の数倍は叱ったという。「現役時代は嫌だったが、ミスをした周りの選手にはその方が響く」。家に帰ると親子の関係に戻るが、部員全員を平等に扱う配慮から、ハンドボールの話は一切しなかった。
身長が低い昇真さんは、どちらかというと目立たない選手だった。1年のころは練習についていくのがやっとだったが、手堅い守備や展開を先読みする力を磨いた。その献身的なプレーが評価され、先輩たちから新チームの主将に選ばれた。「身体的に劣る分、集中して練習するから一度でだいたい吸収する」とは竜之さんの評だ。もちろん本人には伝えていない。
最近、昇真さんは父に誘われて川釣りに出かける。新型コロナウイルスの影響で大会や遠征がなくなり、練習時間も短縮されている。
「何か釣れた」「お、
釣り糸を垂らしながら、父と子に戻って交わす会話。たまにハンドボールの話になるが、もう気にする必要もなかった。