国の責任、賠償対象に焦点 原発事故生業訴訟あす2審判決 初の高裁判断今後に影響

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 東京電力福島第一原発事故を巡り、県民ら約3600人が東電と国に約215億円の損害賠償を求めた「生業なりわい訴訟」の控訴審判決が、30日に仙台高裁で言い渡される。全国約30の同種集団訴訟のうち、東電と国の双方を被告とした訴訟では初の高裁判決。1審は、国の責任を認め、さらに賠償基準(国の中間指針)の対象外だった地域の住民も賠償対象とする原告側の実質勝訴判決で、さらに議論を重ねた高裁での判断に注目が集まる。

■国の規制権限どこまで

 1審判決は、国の責任を認めた根拠として、地震調査研究推進本部が2002年7月に公表した「(県沖を含む)三陸沖から房総沖はどこでもマグニチュード8・2前後の地震が30年以内に20%程度の確率で起こる」とする「長期評価」の信頼性を挙げる。「疑う事情はない」として、同年末までに津波対策を東電に命じていれば、事故を防げたと指摘。規制権限を行使しなかった国の対応は「著しく合理性を欠く」とした。

 ただ全国の訴訟では「長期評価」を受けて、国はどこまで規制権限を行使すべきかで判断が割れている。国も被告となった13訴訟の判決で責任を認めたのは7件と五分五分。原告側代理人は「控訴審での初の判断が、今後の他の訴訟の判決に影響を与える」と話す。

■地域全体の救済狙う

 原告数は同種訴訟としては最多で、避難指示区域内の住民だけでなく、自主的避難等対象区域や現行制度では賠償対象外の会津地方や隣県の宮城、茨城、栃木県の住民も参加している。

 そのため立証方法も工夫している。1審では、原告一人一人の被害立証を行わず、地域ごとに代表となる人を立て、その人の被害を地域全体の被害に拡張する「代表立証」を採用した。

 控訴審でもこれを踏襲。地域ごとの15人の原告が、本人尋問に臨んだ。原告側は、訴訟が地域全体の被害救済を当局に働きかける力になることを期待する。

■損害認定で争い

 1審は、白河市などの県南地域や茨城県の一部など中間指針の対象外の住民への賠償を認め、避難指示区域などの住民への追加賠償を命じた。ただ、原告側は被害実態に見合わない低額なものだと主張。2審で、賠償対象地域の拡大と賠償の増額を求め、中間指針は妥当だと主張する東電と争っている。

 事故から9年半以上が経過し、帰還困難区域以外は避難指示が解除されたが、荒廃した古里への帰還を断念する人も多い。原告団長の中島孝さん(64)(相馬市)は「『放射線量が下がったから精神的被害もそこで終わり』ではない。中間指針という一つの基準だけで賠償を図る今のやり方では、福島は復興できない。そのためにも国の責任を確定させ、賠償を上積みする判決を期待したい」と語る。

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