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サッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)をスポーツ合宿以外にも活用してもらおうと、運営会社が企業研修や教育旅行用に新たなプログラムを作成した。目玉はオリジナル競技「アイマスクサッカー」。コミュニケーションが不可欠な競技で試合を通しチームワークの向上を図り、多様性への理解を深める仕組みだ。
Jヴィレッジは7面の天然芝のピッチのほか、スタジアム、宿泊施設を備え、サッカーの「聖地」と呼ばれる。無料のWi―Fi(ワイファイ)のほか、複数の研修室や最大180人が収容できるホールなどもあり、ビジネス利用にも適した設備が整っている。
運営会社によると、施設利用を巡っては、サッカーをはじめとしたスポーツ合宿などが行われる週末や休日に比べ、平日の利用が少ないという。こうした課題を解消しようと、昨年度から企業などに向けた研修プログラムを作成している。
アイマスクサッカーもその一環で、東京パラリンピックで注目された視覚障害者らの競技「ブラインドサッカー」を参考にしながら、同社がオリジナル競技として考案した。
アイマスクサッカーは、アイマスクを着用した3人と着用していない2人がチームを組んでプレーする。ゴールキーパーはいない。アイマスクを着用していない人は、主に指示を出し、アイマスク着用者はドリブルやシュートなど自由にプレーが出来る。目の見えていないアイマスク着用者には、気を使ったサポートや的確な指示が不可欠で、チームワークの向上が期待される。
東日本大震災以降、浜通りには研修や教育旅行に訪れる企業や学校が増えてきているという。事業運営部の小名山洋介マネジャー(46)は「浜通りには、震災学習以外にも、研修に役立つプログラムがあることを多くの人に知ってほしい」と話している。
声を頼りにプレー 記者が体験
Jヴィレッジが考案した「アイマスクサッカー」の体験会が13日、現地で行われた。大手旅行会社の担当者ら17人に交じって幼稚園から大学までサッカーに打ち込んでいた記者も参加した。
けが防止のためのライフジャケットを着用し、いざコートへ。まずは練習。相手はJヴィレッジ事業運営部の山県信也課長(49)にお願いした。
アイマスクを着けると、急に恐怖心が出てきた。目の前に壁があるのではないかと心配になり、一歩を踏み出すのも勇気が必要だ。「180度回転してください」「もう少し右です」といった山県さんの声かけと、転がると鳴るボールの音を頼りに前進する。パスを出すのも難しかったが、約30分の練習で試合に臨んだ。
試合では「右足にボールあるよ」と言われても、触れない状況が何度もあった。ボールも相手も見えない中でプレーをするのは、難しい。それでも、「11時の方向に進んでください」などと具体的な指示があると、プレーがやりやすかった。
体験会に参加したJTBの担当者は「声かけが必須のアイマスクサッカーは、組織のチームワーク向上に役に立つ。新人研修や外資系企業のチームビルディングに提案してみたい」と話した。
「できないことや失敗は当たり前」という中で、的確な言葉で相手を動かし結果につなげる。身も心も温まった1時間で、こんな研修をやれたら楽しいだろうなと思った。(高田彬)