文字サイズ

    祈りが生む多国籍の「和」

    教会心のよりどころ

    • 日本語のミサでは、外国人にも分かりやすいよう、祈りの言葉などをローマ字表記で映し出す(11月24日、太田市のカトリック太田教会で)
      日本語のミサでは、外国人にも分かりやすいよう、祈りの言葉などをローマ字表記で映し出す(11月24日、太田市のカトリック太田教会で)

     外国人が頻繁に足を運ぶのは、キリスト教会やイスラム教のモスク(礼拝所)といった宗教施設だ。職場や町内会などとは異なるコミュニティーの核であり、外国人にとって心のよりどころ、かつ交流の場となっている。

    ■25か国の人が訪れる

     太田市東本町の「カトリック太田教会」で10月20日に開かれたバザー。激しい雨が降るあいにくの天気だったが、民族衣装や人気キャラクターに仮装した外国人と日本人でごった返した。ブルーシートを屋根にした即席ステージでは各国の子どもがダンスを披露。屋台にはブラジルの揚げパイ「パステル」、フィリピンのおかゆ「アロスカルド」など8か国の料理が並んだ。

    • 民族衣装に身を包んだバザー参加者(10月20日)
      民族衣装に身を包んだバザー参加者(10月20日)

     カメラを手に忙しそうに会場を行き来していた韓国人の金(キム)大烈(デヨル)神父(51)は「ここは世界的にもまれな“多国籍教会”なんです」と胸を張る。定期的に訪れる日本人は約300人、外国人は約700人。国籍はブラジルやペルー、スリランカ、フィリピンなど25か国に上る。

     1990年の改正入管法施行後、外国人が一気に増えたという。以前は日本語のミサだけだったが、91年にスペイン語とポルトガル語、92年に英語、95年にはタガログ語でも始め、今では計7か国語でミサを行う。

    ■「一つの共同体」

     金神父は「国民性によってミサの雰囲気は異なります。打ち解けるには試行錯誤がありました」と振り返る。教会が「一つの共同体」になるよう、母語によるミサは月1、2回とし、その週以外は毎週開かれる日本語のミサに出席することを原則とした。日本語のミサでは、祈りの言葉をローマ字表記にしてプロジェクターで映し出している。

     また、言語別にリーダーを決め、連絡が行き渡るようにした。いずれも多国籍教会ならではの配慮だ。

     日系ブラジル人の由永淳さん(35)は「教会に来れば各国の人と交流できる。ここ2、3年で多くの人の顔と名前が一致するようになった」と話す。フィリピン出身の由井アンナベルさん(38)は「日本に来て孤立する外国人もいる。多くの人と触れ合える太田教会は、外国人のあこがれの場所」とほほ笑む。

    ■「若い人が活力」

     日本人の平均年齢は50歳代後半で年々高齢化している。教会委員長の水野和明さん(60)は「何をするにしても若い外国人が率先して動いてくれる。教会の大きな活力となっています」と感謝する。

    伊勢崎モスク他県からも

    ■県内4か所

    • 祈りをささげるムスリム(11月29日、伊勢崎市の伊勢崎モスクで)
      祈りをささげるムスリム(11月29日、伊勢崎市の伊勢崎モスクで)

     県内には四つのモスクがある。最も歴史のある「伊勢崎モスク」(伊勢崎市喜多町)に、11月の土曜午後7時半過ぎ、車が続々と止まった。集団礼拝がある土曜日は食事会も開かれるため、交流を求めて埼玉や栃木など遠方からもムスリム(イスラム教徒)が訪れる。

     この日集まったのはパキスタン人やインド人ら約40人。多くは中古車業や自営業に携わる。1階の水場で両手、足、口などを洗って清めた後、2階の礼拝堂でサウジアラビアの聖地メッカの方角を向き、両手を耳に近づけたり、ひざまずいて額を床に付けたりする。礼拝は1日5回。その後、聖典コーランの勉強会も開かれた。

    ■「仲間に会える」

     「元気にやってる?」「こっちは娘が大きくなったよ」

    • パキスタン人の宣教師カマルさん一家
      パキスタン人の宣教師カマルさん一家

     来日17年になるパキスタン人宣教師モハメド・アハマド・カマルさん(51)が、食事会でパキスタンカレーを頬張りながら、ムスリムと近況を報告し合った。礼拝や勉強会では私語が禁じられていることもあり、食事会が交流を深める大切な時間だ。前橋市の会社員ラシド・ハルンさん(55)は「仲間に会える食事会が、とても楽しみ」と話す。

     モスクの建物は、以前は町工場のプレハブを利用していた。年々増加する信者の寄付で2005年、一度に約350人が礼拝できる鉄筋2階建ての新モスクが完成した。「我々のことを良く知ってもらいたい」(カマルさん)と開放しており、ムスリムでなくても見学が可能だ。

    ■食の情報交換

     カマルさんの妻の丸山恵美子さん(37)は、結婚後に入信した。ムスリムは、豚肉や酒を口に出来ないなど食事に厳しい規制がある。「食品の成分表のチェックを徹底しています。成分がよく分からないものは怖くて食べられません」と丸山さん。

     イスラム教の戒律に従って処理・加工された「ハラール」と呼ばれる食材を利用する。ハラールは、アラビア語で「許された」という意味。ムスリムの来日者数増加で、成田空港でもハラール料理の提供が始まった。

     モスクでは、結婚を機に入信した日本人女性同士で、ハラールを扱う店を教え合ったりする。丸山さんは「日本では女性がお酒を飲んだり、スカートをはいておしゃれをしたりするが、私たちはそれが出来ない。だけど、ほかは一緒。多くの人がモスクに足を運び、イスラム教を理解してくれればうれしい」と願う。

    2013年12月18日 01時23分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て