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    赤城山麓に野犬繁殖

    猟犬保護相次ぐ

     自然豊かな赤城山麓では、捨てられた犬が野生化し、繁殖している。狩猟が盛んな県西部の山間部では、放置された猟犬が相次いで発見されている。飼い主のマナーの悪さが問題の根源にある。

     ■「犬街道」

    • 畑を走り回る野犬(1月14日、前橋市宮城地区で)
      畑を走り回る野犬(1月14日、前橋市宮城地区で)

     1月中旬、赤城山南麓にある前橋市北部の宮城地区。収穫を終えた畑で、4匹の犬が走り回ったり、日だまりでじゃれ合ったりしていた。

     首輪はなく、毛はボサボサだ。近づこうとすると、サッと距離を置いた。人への警戒心が強そうだ。

     「あれは野犬の群れ。いつもの光景だよ」

     近くで農作業をしていた男性は淡々と話した。かつて捨てられた犬が何代にもわたって繁殖を繰り返したとみられ、どれも同じような鼻筋をしている。

     宮城地区では、野犬が畑や道路、民家の周りで目撃されている。野犬が多く出没する国道353号を「犬街道」と呼ぶ人もいる。

     前橋市には2012年度、宮城地区のほか、粕川、大胡、富士見の計4地区の住民から「畑が荒らされた」といった野犬に関する苦情が95件寄せられた。このほか、野犬に猫や鶏が襲われた事例が11件、人がかまれたケースも2件報告された。

    • 保護した野犬の子犬を抱く、前橋市保健所の斎藤さん(7日)
      保護した野犬の子犬を抱く、前橋市保健所の斎藤さん(7日)

     約2年前には、富士見地区の養豚場に野犬十数匹が侵入し、出荷を控えた豚が数頭死んだこともあった。

     野犬は山に雪が積もる冬場は人里に下りて来て、メスは空き家や堆肥場などで子を出産して育てる。昨年11月には民家の納屋で一度に子犬13匹が保護された。

     ■全国で突出

     前橋市保健所が12年度、市内全域で保護して飼育を希望する人に譲渡した子犬167匹のうち、ほとんどが赤城山麓の野犬が生んだものだった。子犬の保護数は全国の保健所の中でも「突出して多い」(担当者)といい、7日現在、17匹が保健所に収容されている。

     同市保健所などから50匹以上の子犬を引き取って世話をしてきた前橋市内の主婦(58)は「心ない飼い主がいなければ野犬もいなかったはず。数を増やさないためには、世話や去勢・避妊手術をしっかり行ってくれる人に譲渡していくしかない」と語る。

     前橋市も手をこまぬいているわけではない。

     市保健所は、野犬を捕獲するため、よく見つかる場所にオリを仕掛けている。ただ、生殖能力を持つ親犬は警戒心が強く、ほとんど捕まらないという。

    • 猟の前に、マリとスキンシップを取る土屋さん(1月28日、吾妻郡で)
      猟の前に、マリとスキンシップを取る土屋さん(1月28日、吾妻郡で)

     今年からは個別に譲渡するだけでなく、月1回のペースで市民対象の譲渡会(次回は16日)を開いている。市保健所の獣医師斎藤啓子さんは「多くの市民の方に譲渡会に足を運んでもらい、現状を知っていただきたい」と話している。

    【猟犬】

     狩猟の解禁期間(11月15日~2月15日)中の1月28日、県北西部にある吾妻郡の山で、猟犬を使ったキジ猟が行われた。

    • 高崎市動物愛護センターに保護されたイングリッシュセッター(1月24日)
      高崎市動物愛護センターに保護されたイングリッシュセッター(1月24日)

     白毛の犬が、散弾銃を抱えた猟師の約50メートル先をゆっくりと歩き、時折、後ろを振り返る。主人が右に手を振ると、右側のやぶに飛び込んだ。「帰るぞ」と叫ぶと、主人の下に戻ってきた。

     猟師歴40年以上の土屋規夫さん(64)が頼りにするイングリッシュセッターの「マリ」だ。

     「とても優秀でかわいい相棒です」。土屋さんが顎をなでると、気持ち良さそうに目を閉じた。

     土屋さんがマリとコンビを組んだのは昨年8月。約3年前に飼っていた猟犬が死んだため、新たな相棒を探していた。高崎市動物愛護センターのホームページで見つけたのが、飼い主とはぐれるなどして前月に同センターに保護されたマリだった。表情や毛並みなどを見て「いい猟犬になる」と直感し、引き取った。

     猟犬といっても、銃声におびえ、行方不明になる犬もいる。それを防ぐのは主人との信頼関係だ。

     土屋さんは猟の解禁前からマリと毎日のように山を散歩し、絆を深めた。猟期には2日に1回のペースで山に入った。マリはキジが潜む場所を見つけ、土屋さんの指示で空に追い出す役目をしっかりと果たした。

     だが、県内でマリと同じイングリッシュセッターやポインターなど狩猟用の犬が保護されるケースが相次いでいる。

     県と高崎市動物愛護センターによると、12年度に保護した猟犬は少なくとも20匹。ペットの可能性もあるが、狩猟期間中や終了後に収容される事例が多く、ほとんどが猟犬とみられるという。

     猟犬は猟師とはぐれても、主人の臭いがついた物や犬舎を残しておけば戻ってくる。だが、県内で銃を使って猟をする人の約4割が埼玉や東京、千葉など県外者のため、すぐに保護に戻れない。

     県は12年度からすべての狩猟者に対し、猟犬が行方不明になったら保健所に連絡することや、首に鑑札を付けることを呼び掛けるビラを配り、管理の徹底を求めている。

     土屋さんは「次のシーズンまで飼育する手間や費用を惜しんで、山に犬を放置して帰る県外の猟師もいると聞く。狩猟時に猟犬の登録を義務づけるなど、対策の強化が必要だ」と訴えている。

    2014年03月08日 17時18分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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