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観光、動物福祉に強み 放牧飼育のメリットは? 神津牧場(下仁田町) 須山哲男場長

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放牧の優位性を語る須山場長(下仁田町の神津牧場で)
放牧の優位性を語る須山場長(下仁田町の神津牧場で)

 長野県境に近い山あいにある「神津牧場」(下仁田町南野牧)では、放牧を取り入れた最古の西洋式牧場として1887年(明治20年)に開設して以来、変わらぬ風景が広がっている。387ヘクタールの広大な敷地に放たれた約200頭のジャージー種がのびのびと草をはむ飼養方法は、一般的な牛舎飼いと比べて効率的ではない。「草と牛は一体であり、草を乳に換える」とする経営方針に沿って、130年以上の伝統を守り続ける意義を牧場の須山哲男場長(71)に聞いた。

 ――牧場が開設された経緯は。

 「1887年、長野県志賀村(現佐久市)出身の神津邦太郎(1865~1930年)が開設した。神津は当時の欧米人を見て、日本人の食生活を改め体格向上に貢献したいという思いがあった。まだ牛乳を飲むことも一般的ではなく、いわば『明治時代のベンチャー企業』だった」

 ――牧場の乳牛は一般的なホルスタイン種ではなくジャージー種なのは。

 「牧場は標高1060メートルにあるが、ジャージー種は寒冷な環境に強い。体が小さくて乳量はホルスタイン種の6割ほどだが、乳質が良く、濃い牛乳を出す。加工品の品質も良くなり、牧場の牛乳で作られる『神津ジャージーバター』は美しい黄色で『ゴールデンバター』とも言われる」

 ――乳製品の製造販売といった経済活動のほか、人材育成も担っているが。

 「畜産関係や獣医師を志す人の研修施設になっている。県内外から毎年6~7校の専門学校や大学の農学部などの学生がジャージー種の飼養管理や草地管理、乳製品の加工や販売についても学んでいる」

 ――一般の見学も受け付けている理由は。

 「見学者は100頭近い乳牛が、放牧地と数百メートル離れた搾乳場を行き来する姿を見られる。子どもたちが乳搾りをしたり、バターを作ったりすることでいつもスーパーに並んでいる乳製品がどのように生産されるかを学ぶことができる。乳牛を間近で見る子どもたちの目は輝き、関心を持ってもらえるようだ」

 ――新型コロナウイルス感染拡大による影響は。

 「来場者が減り、休業もした。収入の大半を占める乳製品販売額も落ち込んでいる。2019年10月の台風でも土砂崩れが起き、来場者が使う近くの県道が一時、寸断されるなどの逆境が続く。こんな時だからこそ、職員18人が知恵を絞って、技術を磨き、乗り越える気構えを持っている。チーズの全国的な大会では賞を獲得した。乳製品を加工することで、消費期限を長くする菓子作りに取り組んでいる」

 ――最近話題になっているアニマルウェルフェア(動物福祉)の点からも、放牧の重要性が改めて注目されている。

 「放牧にはアニマルウェルフェアや環境面のみならず、教育的観点や牧草地の草原景観を生かしたグリーンツーリズムなど様々な価値がある。これからも守り続け、先人の作ったブランド力を高めていくのが使命だ」(聞き手・谷所みさき)

 すやま・てつお 1949年12月生まれ、東京都品川区出身。東京農工大学の農学部植物防疫学科(当時)卒業後、農林水産省入省。植物生態学に興味を持ち、農研機構東北農業研究センターなどで勤務し、牧草の研究などを行っていた。2011年7月から神津牧場で勤務し、13年から場長。

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2086935 0 トップインタビュー 2021/05/30 05:00:00 2021/05/30 05:00:00 2021/05/30 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210529-OYTAI50004-T.jpg?type=thumbnail

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