大雨備え事前放流…洪水調節容量1.6倍に
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34ダムが協定

頻発する豪雨災害を受け、発電や水道など利水目的でためた水を水害対策に活用するダムの運用が今夏から全国で始まった。県内では34基のダムの関係者が5月に協定に合意。大雨に備え、利水用の水を事前放流して水位を下げる仕組みをつくった。雨水をためるために活用できる貯水容量(洪水調節容量)は全県で1・6倍に拡大し、有効貯水量に対する割合は3割から5割へと増えた。
昨年10月の台風19号などを受け、国が全国のダムで協定の締結を求めていた。県内で協定に参加したのは、「首都圏の水がめ」と呼ばれる利根川水系の矢木沢、八ッ場、奈良俣ダムなど。国、県、水資源機構などのダム管理者や水道・電力事業者などの利水権者が参加し、5月28日に合意した。
ダムには「利水」と「治水」の機能があるが、発電、水道、農業など利水目的のダムは、洪水を防ぐ治水機能を担っていなかった。利水と治水機能を併せ持つ多目的ダムも、洪水調節に使える容量は限られていた。
協定により、今夏からは大雨が予想される3日前から利水用の水を事前放流できるようになった。ダム34基の洪水調節容量は約2億2000万立方メートルから約3億5000万立方メートルに増え、有効貯水量(約7億1000万立方メートル)に占める割合も31%から49%にアップした。事前放流後に水位が回復せず、水不足が起きた場合は国が補償する。
ただ、短時間に記録的な大雨をもたらした熊本県の水害のようなケースでは、事前放流を始めるタイミングは難しい。国土交通省関東地方整備局は「降雨予測などの精度を向上させていくことが重要」としている。