食改善 競技力高める
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公認スポーツ栄養士 上原寛恵さん 41

県内では数少ない「公認スポーツ栄養士」として、陸上長距離や卓球などのトップアスリートを食生活の面で支えている。「最良のプレーを実現するには、まず食事から見直して」と訴える。
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北広島町出身。兼業農家の家庭で育ち、子どもの頃は「毎日のように、土に触れて遊んでいた」。栄養士だった母に憧れ、大学卒業後は、自身も管理栄養士になった。県内の病院で勤務しながら、患者に提供される食事のおいしさや、栄養バランスに頭を悩ませる日々を送った。
転機は2012年、勤務先に「スポーツドクター」が配属され、現役のスポーツ選手らと接する機会が増えたことだった。
あるプロ選手は、毎日外食で、夜はファミリーレストランで過ごす生活を送っていた。プロスポーツでも、栄養士が食事を管理するケースは一握り。偏った食生活が原因でけがをし、事実上、選手生命を絶たれる若者たちも目の当たりにした。
スポーツ界が抱える食生活の問題に「この現実を何とかしなくては」。食のプロとして使命感に燃えた。
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一念発起し、日本栄養士会と日本スポーツ協会が共同で認定する資格「公認スポーツ栄養士」に挑戦。合格率が低い難関だが、東京や大阪に通って関連の講習を受けるなどし、2年をかけて合格までこぎ着けた。
14年には、スポーツ栄養士としての活動の幅を広げるために事業会社を設立。広島経済大の陸上部に栄養管理の重要性をアピールし、選手たちのサポートを任された。
当時、多くの男子選手は体重の増加を恐れ、朝、昼の食事が「菓子パンと缶コーヒー」といった偏食になっていた。過酷なトレーニングで慢性的なエネルギー不足に陥り、貧血やけがに悩まされるケースも目立っていたという。
「少しずつ改革していこう」。学生たちにメールで毎食の写真を送ってもらい、「ヨーグルトだけでも追加しよう」「今度は、ゆで卵も食べてみては」と、学生でも実践しやすいアドバイスを続けた。選手らのけがが次第に減り、体調不良もなくなっていった。チームの競技力も飛躍的に高まり、全日本大学駅伝に出場する強豪へと成長した。
「努力した選手たちが大舞台で活躍してくれるのが、何よりもうれしい」と笑みをこぼす。
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今後の課題は、小中学生のジュニアアスリートたちの「食育」だという。
成長期にもかかわらず、ダイエットのために油分を抜くなどして、肘に炎症を起こすなどする児童・生徒は少なくない。最近では、新型コロナウイルスの感染拡大で運動不足となった子どもの骨折なども増えているという。
「栄養管理が、ますます重要になっている。広島から世界で活躍する選手をサポートしていきたい」
思い描く未来には、子どもたちの笑顔が光る。(寺田航)
うえはら・ひろえ 1979年生まれ。公認スポーツ栄養士として「ANSER3(アンサーキューブ)」を設立し、日本政策投資銀行などが開催する「第4回中国地域女性ビジネスプランコンテスト(SOERU)」で中国地域ニュービジネス協議会長賞を受賞した。