備後6市町 災害弱者避難計画 3分の2 支援者未定
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◇心理的負担■「思いくむべき」
高齢者らが災害で避難する際に必要な支援を明記しておく避難行動要支援者の個別計画で、備後地方6市町の対象者約6万9000人のうち、少なくとも約4万6000人は支援者が決まっていないことが読売新聞の調査でわかった。昨年7月の西日本豪雨から、間もなく7か月。実効性のある計画の策定が急がれる。(福本雅俊)
6市町によると、避難時の支援が特に必要な人の「避難行動要支援者名簿」は各市町とも作成済みで、計6万9498人(昨年12月20日現在)。対象者は各市町が要件を定め、一人で暮らす75歳以上の高齢者や障害者が含まれている。
要支援者の個別計画では、近隣住民らを支援者に選定し、支援する際の注意点を記す。6市町では、計画自体が未策定か、計画で支援者が一人も決まっていない要支援者が計4万6226人に上る。
尾道市では、要支援者1万8390人のうち、1万8239人の支援者が未定。市の中津康徳・総務課長は「地域で受け皿が整っておらず、個人情報の取り扱いに不安があることが遅れている要因」と話す。福山市では、2万8518人の8割近くが支援者を割り当てられていない。市の担当者は「命に関わる心理的負担から、支援者のなり手が少ない」と言う。
三原市は個別計画の内容を把握していないとし、石原洋・高齢者福祉課長は「これまでは地域に任せていた」と釈明している。
国の指針では、要支援者1人を複数で支援するのが望ましいとしているが、複数の支援者がいる要支援者は計8187人にとどまる。
◇制度の周知今こそ
府中市では、要支援者の約7割は支援者が決まっていない。
計画の策定では、要支援者の状況や意思を確かめるため、本人との話し合いが不可欠となる。しかし、徳毛さんは「支援制度を知らない人が多い。支援が欲しいのに、障害や病気のことを知られたくないと、自身の情報を提供するのをためらう人もいる」と強調。「西日本豪雨で防災意識が高まっている今こそ、制度についてきめ細かに説明し、呼びかけを強めるべきだ」と訴える。
徳毛さんは昨年12月、高齢者らが交流するサロンで、防災研修会を企画。参加した70歳代女性は個別計画の重要性を理解し、夫(78)とともに作ってもらうことにした。足が不自由で、一人では避難場所に行けない。「豪雨であちこち崩れたと聞き、不安なまま、どうすればいいか分からなかった。いいタイミングで研修会があった」と喜んだ。
別の70歳代女性は、難病の夫と暮らす。これまで、「病気のことは積極的に話す情報ではない」と考えていた。豪雨の避難所で住民同士が助け合う姿を目にし、変わった。「地域の温かさを感じた。病気のことを伝えて支援をお願いすることにした」
福山市は来月、福山防災リーダー連絡協議会と連携し、住民と支援制度について協議する。府中市は今後、要支援者に地域への情報提供の意思を再確認していくという。
<避難行動要支援者の個別計画> 東日本大震災を教訓に2013年に改正された災害対策基本法で、市町村は避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられた。国は避難支援の指針を示し、市町村に個別計画の策定を要請。民生委員や自主防災組織、自治会などと連携して支援者を選定し、避難の場所や経路を記載することや、計画の内容を把握することを求めている。