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<1>言葉の壁 帰国後苦しむ

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◇83歳 日本語勉強欠かさず

日本語教室で熱心に授業を受け続ける重山さん(中央、広島市中区で)
日本語教室で熱心に授業を受け続ける重山さん(中央、広島市中区で)

 日本人なのに、日本語がうまく話せない。もどかしさは、計り知れないだろう。日本で暮らす中国残留邦人の多くが抱える悩みだという。平均年齢は、80歳に近づいている。

 鳥取市出身の重山厚さん(83)(広島市中区)は10歳の時、家族で移住していた満州(現中国東北部)で終戦を迎えた。軍人だった父親は侵攻してきた旧ソ連軍によってシベリアに抑留された。家族が当てにした汽車は来ず、逃避行の中、母やきょうだいを失った。

 「帰る途中、みんな死んだ。僕は残留孤児になりました」

 赤ん坊だった妹と共に、子どものいない中国人夫婦に引き取られた。強い敵対感情を抱かれていた日本人であることを周囲に知られないよう、まもなく一家で引っ越した。養父母は、2人に優しく接してくれた。

 重山さんは1959年、ハルビンの建築学校を出て河北省で鉄鋼生産の現場で働くなどした。望郷の思いはいつも胸にあったが、「養父母のため、僕は大きくなって、いっぱいお金を稼ぐ」と決めていた。

□■

 72年、日中が国交正常化した。91年、一足先に日本に、身元未判明のまま帰国していた妹の勧めで訪日調査に参加。終戦時に引き揚げていた叔父が名乗り出て、93年に永住帰国が実現した。

 妻と娘3人と一緒に、半世紀近くたって帰ってきた祖国。妹が暮らす広島市に居を構えたが、「行ってみると、ちょっと日本、中国と違った」という。

 病院や区役所に出かけても言葉が通じない。職業安定所に通ったが、「日本語できない58歳、雇ってくれるところなかったですね」。まだ若く、日本語の上達が早かった娘たちに外出にも付き添ってもらいながら、帰国したことを後悔することもあった。

 「日本語分からなくても、頑張って勉強」。中学校と夜間高校に通い、家に帰っては辞書を引き、外ではなるべく日本語を使い続けた。少しずつ、自分の気持ちを表現できるようになった。

 80歳を過ぎても日本語の勉強は欠かさず、近くの公民館で開かれる教室にも週3日通う。そこでは、ほかの残留邦人やその家族ら計約30人も一緒だ。「僕は勉強して、いろんなこと、もっと知りたい。孫たちにいっぱい教えるため、もっともっとうまくなりたい」

□■

 2015年度、国が全国の中国残留邦人ら3867人から回答を得た実態調査によると、平均年齢は76歳。このうち、日本語を不自由なく理解できる人は18・3%にとどまる。多くは50歳を過ぎて帰国し、片言は話せても複雑な表現は使いこなせないままだ。

 

◇国が生活支援 改正法施行10年

 国に損害賠償を求めた残留邦人の集団訴訟は、2002年12月提訴の東京地裁に始まる。「早期の帰国措置をとらず、帰国後の自立支援も不十分だった」とし、全国の15を超える高裁・地裁で争ったが、一部を除いて原告側の敗訴が続いた。

 07年11月に「改正中国残留邦人支援法」が成立し、当時の福田康夫首相が原告らに謝罪した。翌年施行された支援法には、それまでの日本語学習や就労支援などに加え、老齢基礎年金の満額支給や地域社会における生活支援などが盛り込まれた。

 

<中国残留邦人>国策により、満州には開拓を目的に多くの日本人が移り住んでいた。中国・四国中国帰国者支援・交流センター(広島市南区)によると、県内からの開拓移民数(満蒙開拓青少年義勇軍を含む)は約1万1000人で、全国で8番目に多かった。

 終戦直前、旧ソ連軍の対日参戦による混乱で多くは肉親と離ればなれになり、大陸にとどまることを余儀なくされた。厚生労働省などによると、日中国交正常化後に帰国した中国残留邦人は約6700人。県内には現在、約150人(登録数)が住む。

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9307 0 祖国で暮らす-中国残留邦人のいま 2018/02/27 05:00:00 2018/02/27 05:00:00 「80歳になっても頑張って勉強」と熱心に授業を受ける重山さん(中央前)(広島市中区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180226-OYTAI50003-1.jpg?type=thumbnail

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