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    瀬戸内の素材に的絞る

    • 牡蠣だしを用いた試食会では、味が好評だった(福山市で)
      牡蠣だしを用いた試食会では、味が好評だった(福山市で)

     ◇カネソ22(福山市)

     福山市に本社を構え、岡山県笠岡市に工場を持つ老舗の出汁(だし)製造販売会社「カネソ22」が2月、同社にとって史上最高級の家庭用だし「広島牡蠣(かき)だし」2種類を発売した。

     4代目の豊田滋之代表(43)が初めてフクビズを訪れたのは、昨年3月。同社の起源は、創始者の傳七氏が花かつおの製造を開始した1916年にまで遡り、49年に法人化、62年には業界に先駆けて日本初となる「だしパック」を販売、今年で創業102年を迎える。

     同社の歩みは、日本の家庭料理がその質を高めてきた歴史とともに刻まれてきた。かつては各地の生活協同組合(生協)などを中心に、日本中に流通網は広がり、経営は安定していた。

     しかし昭和から平成へと時代が移り、日本人の食生活が多様化する中で、どちらかというと「おとなしい社風」の同社は、徐々に市場シェアを失っていった。豊田代表がバトンを受け継いだ2016年には、売り上げの前年割れが常態化していたという。

     「将来への展望が描けない。新たな一手のヒントがつかめれば」との思いが、フクビズ来訪の目的だった。

     現在のだしパック市場は、各社が嗜好(しこう)の多様化に対応し、広がりをみせている。一方で消費者の目は厳しく、「(お金を払うだけの)価値に見合っているか」と価格を見極めている。豊田代表は「その波に確実に乗っているとは言い難い」と話し、「瀬戸内の企業としてもっと地元に貢献したい。社員が誇りを持てる本当に良いものをつくる会社として認められたい」とも訴えた。

     100年超のだし作りへの思いと、技術の粋を集めた高付加価値製品の開発、瀬戸内海の上質素材を徹底的に生かすというこだわり。そこに価値を見いだす消費者にターゲットを絞った売り込み――。目指すべき方向性が見えた。

     生産量日本一を誇る広島産のカキを味の軸に、度重なる試作と試飲を繰り返した。化学調味料を使わず「素直に舌に訴えるおいしさ」を実現するのに苦労し、当初の予定をはるかに超える半年の時間を要した。

     関係者全員が味に納得し、豊田代表の最終承認が出たのは年の瀬の昨年12月。そして今年、販売開始した広島牡蠣だしは、既に首都圏の高級スーパーでの本格的な取り扱いが決まるなど、着実に狙ったマーケットでの立ち位置を高めつつある。4月9日には、そのだしを使ったウェルカムドリンクやスープ、お好み焼き、パエリアなどを提供する試食会イベントも福山市内で開き、好評を得た。

     広島牡蠣だしが社員らのチャレンジ精神を呼び起こす新たなターニングポイントとなり、瀬戸内海の素材の素晴らしさを国内のみならず、世界中に広めようと思い描く同社の挑戦に、フクビズは伴走していきたい。

     (プロジェクトマネジャー・池内精彦)

     

     ◇メモ 広島牡蠣だしは、カビ付けと天日干しを繰り返し、時間をかけてうま味を凝縮した鹿児島県産のカツオ本枯れ節や、瀬戸内産のイワシの煮干し、羅臼昆布、広島県産シイタケ、カキのエキスを絶妙のバランスで配合しパックに詰めた。「鰹本枯節」が10グラムのパック10袋入り、「瀬戸内産煮干し」が同12袋入りでともに1000円(税別)。問い合わせはカネソ22(0865・66・2211)。

    2018年05月14日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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