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〈9〉シロ 今井浩恵会長

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砂川 にぎわう新工場へ

※佐々木紀明撮影
※佐々木紀明撮影

 「SHIRO」のブランドで海外進出を果たした化粧品メーカー「シロ」(本社・東京)が6月、創業の地、砂川市に子ども向けのアスレチックや職業体験ができる設備を備えた新工場を建設する計画を発表しました。26歳で社長に就任した今井浩恵会長(47)がプロジェクトを推進しています。これまでの道のりや事業の狙いなどを聞きました。(聞き手 読売新聞北海道支社長 稲葉光秋)

 ◆学校計画も

 稲葉 砂川市に新工場を建設する「みんなのすながわプロジェクト」に関する地域説明会の動画を見て、心を動かされました。どういう経緯で始まったのでしょうか。

 今井 まず、砂川市の現工場を移転、増設する必要がありました。ここ2、3年、本社に近い千葉や埼玉で移転先を探していたのですが、どこもしっくりこない。そんなときに、工場のスタッフと話していて、砂川の江陽小学校跡地(約1万8000平方メートル)が社有地になっていることを思い出しました。先代が砂利採取のために購入し、その後使っていなかった土地です。

 稲葉 新工場を自社製品の生産拠点としてだけでなく、地域の発展に貢献するものにしようとお考えになったのはどうしてですか。

 今井 ありがたいことに、皆様のおかげでSHIROというブランドを知っていただくことができ、売り上げも伸びています。でも、自分の周りを見渡したとき、10年たっても子どもたちの教育環境はそれほど変わっていないように、私には思えました。工場をつくるだけじゃなくて、地域を盛り上げることにも企業のお金を使いたいという思いもあり、構想が膨らんでいきました。

 稲葉 工場以外にはどんな設備をつくりますか。

 今井 市民の皆さんの声を聞きながら具体化していきたいと思っていますが、子どもたちが職業を学べる場やアスレチック、放課後学校などを考えています。2019年までの10年間、「すながわジャリボリー」という職業体験のイベントを砂川で開催してきたので、その常設版というイメージです。

 稲葉 球団や私立小学校も設立するお考えですね。

 今井 砂川市で独立リーグの球団を作りたいという話は2年近く前からありましたが、資金を出す企業がなく、話があまり進んでいなかったそうです。それで、球団の代表になってほしいと市民からお願いされました。学校については、市立の小学校5校と中学校2校を統合し、小中一貫教育にすることが市で計画されています。ですから、砂川の子どもたちのための、新たな選択肢として学校を開くことも考えたわけです。

 稲葉 「所有者が離農した土地を森に返す」という計画もあります。

 今井 離農して事業継承されていない農地を買い取り、植林して森に返していく事業です。今月から始まる「種プロジェクト」では、昔から砂川市内に根付いている大木の種を子どもたちと一緒に採取し、発芽させて幼木にし、江陽小跡地に植えていくことも予定しています。微力ではありますが、地球環境を考えてのことです。

 ◆特別な場所

 稲葉 今井さんにとって砂川は特別な場所なんですね。

 今井 砂川は自分を育ててくれた土地です。20年間住んで、就職、結婚、出産、子育てもして、同時にSHIROというブランドを育ててくれました。そのことへの感謝の気持ちはものすごく大きいです。あの場所だったからこそ、あの空気と水があったからこそ、SHIROの製品は世界中に広がることができたと思います。

 稲葉 コロナ禍でも会社の業績はいいそうですね。

 今井 今年6月期の売上高は前年比約50%増の133億円でした。自分たちがほしいと思うものをつくってきた結果だと思います。いいものをつくり、お客さまに喜んでいただく。そのことを、自社ブランドを創業してから、足かけ13年、愚直に続けてきました。今回のプロジェクトも、市民の皆さんが「砂川にこんなのがあったらいいな」と思うものを具現化するという点では同じことなんです。

 ◆ブランド拡大

 稲葉 今年7月に社長を退き、会長に就任されました。

 今井 今までは、何もないところからブランドをつくるというゼロから1への段階でしたが、次はこのブランドを広めていく段階です。そういう仕事が得意な今の社長にバトンタッチしました。

 稲葉 プロジェクトは今後、どう進めていきますか。

 今井 持続可能なプロジェクトにしていくためには、シロだけで完結させるのではなく、全てを地元にお返しして、施設も球団も砂川市民が運営できるようにしたい。そのために実行委員会を設立して、市民と一緒に計画を進めていく仕組みを作りました。砂川に住んでいる人たちだからこそ、砂川が求めているものをより深めて、施設をより良くしていけると思います。

 稲葉 説明会では「砂川から世界へ発信していきたい」ともおっしゃっていました。

 今井 プロジェクトのゴールは、世界中から砂川に多くの人が訪れるようになることです。「何と大それたことを」と思われるかもしれませんが、世界的な化粧品ブランド「ロクシタン」は、フランスのプロバンスに本社工場があります。 辺鄙へんぴ な場所ですが、そこに世界中からたくさんのファンが訪れます。あの工場を見たことが今回のプロジェクトにもつながっています。世界中にSHIROという名前が知れ渡り、それをきっかけに砂川に来てもらう。それを私は目指しています。

 【いまい・ひろえ】 旭川市生まれ。1995年、文化女子大学室蘭短大卒。同年、ハーブ関連の生活雑貨を製造販売する「ローレル」に入社。2000年、社長に就任。化粧品事業を拡大し、自社ブランド「LAUREL」をスタート。今年7月、会長に就任。

 【シロ】 1989年、砂川市でローレルとして創業。本社・東京都港区。今年6月期の売上高は133億円。11年にがごめ昆布からスキンケア製品を開発。16年にロンドン店、18年にニューヨーク店を開店。19年にブランド名を「SHIRO」に変更した。

 【対談を終えて】

創業の地 魂離れず

稲葉支社長(右)と談笑する今井会長
稲葉支社長(右)と談笑する今井会長

 砂川の江陽小跡地に立ってみた。夏の終わり、チョウとトンボが入り交じって舞う広々とした空き地。はるか向こうにピンネシリの山並みが連なっていた。

 ここにやがて、今井会長が思い描く新施設が現れる。いまは通行人も少ない一帯が、親子連れなどでにぎわう光景を想像するのは楽しい。

 シロの新工場は東京の本社からみて便利な首都圏か、創業地の北海道、砂川か。今井さんは考えに考えた末、いまの自身を育ててくれたまち、砂川を建設地に選んだ。

 26歳で社長を引き受けて以来、業績を伸ばし、販路を広げてきた。「世界に目が向いていた間、砂川や北海道から魂が離れていました」と打ち明ける。本当はしかし、魂は離れていなかった。心の芯に、ずっと砂川のまちが大切な場所として、おき火のように燃え続けていたに違いない。ただ、物流などの面を考えると、生産拠点をここに選んだことは経営者として重い決断だったろう。

 今後の会社の業容拡充はもちろんのこと、新設を検討中の球団や小学校の運営、離農問題への対応――。地域に貢献するための多岐にわたる重責が待つ。

 未来の展望について、「夢というより、現実にします」と言い切る姿に揺らぎはない。活性化策に悩む地域があまたある北海道。こういう経営者が一人でも多く現れてほしい。

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使い方
2419792 0 支社長対談 2021/10/05 05:00:00 2021/10/05 05:00:00 2021/10/05 05:00:00 支社長と対談する化粧品メーカー「シロ」の今井浩恵会長(3日、札幌市中央区で)=佐々木紀明撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211005-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail

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