華僑 共生の夢

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南京町のにぎわいを作ってきた「老祥記」3代目の曹英生さん(右)と、バトンを引き継ぐ4代目の祐仁さん(神戸市中央区で)
南京町のにぎわいを作ってきた「老祥記」3代目の曹英生さん(右)と、バトンを引き継ぐ4代目の祐仁さん(神戸市中央区で)
市場に来た買い物客でごった返す南京町(1933年頃)=南京町商店街振興組合提供
市場に来た買い物客でごった返す南京町(1933年頃)=南京町商店街振興組合提供

 「この地に根を下ろし、日本人と『理想郷』を作ろうと頑張ってきた。150年の今年を盛大に祝いたい」

 真っ赤な屋根や柱、店先につるされた中国提灯ちょうちんが映える神戸市の中華街・南京町。各店の行列を見ながら、豚まん店「老祥記」3代目社長の曹英生さん(60)(南京町商店街振興組合理事長)は力強く語った。路上では行き交う観光客に「好吃ハオチー(おいしいよ)」の言葉が飛び交う。「約30年前までの寂しさがウソのようだ」

 ◇「南京さん」の市場

 南京町の誕生は、神戸港の開港と県が発足した150年前の1868年に遡る。長崎から西洋の使用人や通訳として神戸に降り立った十数人の華僑は、日本と清(当時)との間に条約がなかったために外国人居留地の西隣で暮らし始めた。豚肉や漢方薬を売る店などが作られ、当時、国内では中国人を「南京さん」と呼んでいたことから、一帯は「南京町」と呼ばれる国際色豊かな市場となった。

 だが満州事変や日中戦争が町を一変させた。華僑への厳しい監視で帰国者が相次いだ上、空襲で焼け野原に。戦後は狭い路地に外国船員相手のバーなどが並び、けんかの絶えない「危ない、汚い町」のイメージが広がり、廃れていった。高度成長期も取り残され、中華料理店が広東料理の「南京町・民生」だけになったときもあったという。社長の呉正一さん(51)は「人がいないので店の前で野球ができた」と小学生の頃を振り返る。

 そんななか、1977年、テレビドラマで異人館街が脚光を浴び、「南京町を次の観光地に」と市の後押しを受けた商店主らが立ち上がった。各店が4分の1ずつ、市に土地を売却。路地を広げ、広場や長安門などを整備し、85年、今に至る観光地に生まれ変わった。

 「自分たちでも楽しめることをしよう」と、曹さんらは旧正月を祝う春節祭を計画。店を終えてからメンバーで龍舞の練習を重ね、87年に初めて披露し、4日間で30万人近くを集めた。現在、日本の高校生らも参加する一大行事となった。

 95年の阪神大震災で多くの店が被災したが、広場で炊き出しを行い、おかゆや水ギョーザなどを提供。中止となった神戸まつりの代わりに元町商店街と一緒に祭りを開催し、市民を勇気づけた。曹さんも「がんばろうKOBE」と、何度も口にした。

 ◇大陸文化 海渡る

 「落地生根らくちせいこん」。移り住んだ地に骨を埋めるという覚悟を示す、華僑の生きざまを表した言葉だ。資金を出し合って1899年に設立した神戸華僑同文学校(現・神戸中華同文学校)には、華僑だけでなく、日本の子どもたちも通う。開港とともに西洋のモダン文化を受け入れ、華僑を通じてもたらされた大陸文化も港町に溶け込んでいる。神戸大名誉教授(中国近現代史)の安井三吉さん(76)は「神戸に入った華僑は貿易商として、当時はまだ貿易に精通していない日本人に頼りにされた。自然に共生するようになった」とする。

 150年を祝う南京町のイベントは春節祭(2月16~18日)の30回目を終えた後、3月15日から毎月15日を中心に開催される。曹さんらは元町や三宮の商店街などとも協力して、観光客を港町に一層呼び込もうと計画を練っている。

 計画には次世代の町の担い手もかかわる。曹さんの長男、4代目の祐仁まさひとさん(30)もその一人だ。大手電機メーカーを退職し、2012年から店に加わっている。

 「神戸の町や人とともに南京町はあり続けた。祖父や父の世代を見習い、ここだけがにぎわうのではなく、市内全体に人が集うように町づくりに励みたい」(近藤修史)

 ◇繁栄の礎「三把刀」

 JR元町駅南側の東西約270メートル、南北約110メートルに中華料理や雑貨などの約100店が集まる。開港に伴って移り住んだ華僑は当初、料理や理髪、洋服仕立てに携わる「三把刀」と呼ばれる人が多く、マッチや繊維などをアジアに輸出して財をなす人も現れた。最近は中国や台湾の観光客も目立ち、南京町商店街振興組合は「都市部は次々に近代化しているため、かつての町並みを懐かしく思い、足を運んでくれているのでしょう」とする。

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1666 0 兵庫の輝き~県誕生150年~ 2018/01/01 05:00:00 2018/01/01 05:00:00 南京町のにぎわいを作ってきた「老祥記」の3代目の曹英生さん(右)と、バトンを継ぐ4代目の祐仁さん(神戸市中央区の南京町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180102-OYTAI50015-1.jpg?type=thumbnail

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