街に響け わーはっはっ
完了しました


笑いヨガ教室主宰 佐々木 博美さん 姫路市
「わぁーはっはっはっはー。ホッホッ、ハッハッハッ、イェーイ!」
同市の佐々木博美さん(57)が主宰する教室「姫路笑いヨガクラブShi―ro」。コロナ禍で参加者は4人と以前の半分ほどだが、やたら甲高い笑い声はいつも通りだ。3度にわたる乳がんの手術を乗り越え、「姫路を笑いあふれる街にしたい」と前を向く。
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「末期の浸潤性乳管がんです。少しでも長く生きられるように全力を尽くします」。医師から絶望的な宣告を受けたのは2011年だった。右胸のがんが左胸などに転移しており、手術の施しようもなかった。市内の借家で小学3年生の息子と2人暮らし。懸命に働いてきた。「この子がいてるのに死なれへん」。ホルモン療法と分子標的薬による治療を始めた。
がんは縮小したが、2年後に薬が効かなくなった。強い抗がん剤に替えると、手足の皮と爪がはがれ、髪も抜け落ちた。「これ以上体力が落ちたら子供の面倒を見られへん」。薬をやめると、がんが再び大きくなり、神経を圧迫する激痛にもん絶した。「手術で寿命は延びない」と言われたが、痛みを取るため、15年に右の乳房と胸筋を切除した。
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「残る命の使い道を探さなきゃ」。これまでは自分のことで精いっぱい。抗がん剤治療を断り、「人のために何かできることないかな」と参加した講習会で、たまたま体験したのが笑いヨガだった。「笑うふりをするだけやのに、何でこんなに楽しいんやろ」。大声で笑うことなんて長い間忘れていた。
1年ほど続けると、「死んでたまるか」という思いが、「がんと共に楽しく生きよう」に変わった。16年に講師の資格を取得し、市内3か所でクラブを主宰。企業や団体から依頼があれば講習会も開く。県内5か所の高齢者施設も毎月訪問してきた。「認知症のお年寄りが笑顔になり、1か月後も私を覚えていてくれることがうれしい」
昨年4月以降はコロナ禍で全ての活動がストップしたが、「困難な時こそ笑いが必要」とオンライン講座を取り入れ、10月から対面の活動も再開させた。
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17年に左胸の乳腺、19年に右わきのリンパ節を切除したが、がんはそれほど進行していなかった。「体はすごく元気。笑うことで幸せホルモンが出てるから」。笑いヨガによる免疫力の高まりを実感している。
今年の目標は多くのリーダーを育て、次へつないでもらうこと。人が喜んでくれると、それが自分の喜びに変わる。笑いで広がる仲間との絆があるから、心が折れずに生きていける。
「みんな、ありがとう。さあ、これからも笑顔をいっぱい届けようっと!!」(新良雅司)
<MEMO> 笑いヨガ(ラフターヨガ) 笑いの体操とヨガの呼吸法を組み合わせた健康法。1995年にインドの医師とヨガに熟練した妻が考案した。声を出して笑うことで多くの酸素を取り込み、「幸せホルモン」と呼ばれるエンドルフィンやセロトニンなどの分泌が増え、免疫力や自己肯定力の向上、脳の活性化などに効果があるとされる。国内ではNPO法人「ラフターヨガジャパン」(東京)などが普及に取り組み、国際団体が認定するティーチャーやリーダーなどの資格がある。佐々木さんはティーチャーの資格を持ち、これまでに35人のリーダーを育てた。