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パンク・ロックバンド「ガガガSP」ボーカル コザック前田さん 41

「音楽をやっている限り、神戸にこだわり、住み続けたい」と語るコザック前田さん(神戸市内で)
「音楽をやっている限り、神戸にこだわり、住み続けたい」と語るコザック前田さん(神戸市内で)

 今年の1月17日。ある人物が、東遊園地での追悼行事に初めて姿を見せた。神戸を代表するバンド「ガガガSP(スペシャル)」のコザック前田さんだ。

 ガガガSPは、阪神大震災の発生から2年後の1997年に結成され、「神戸駅」や「国道二号線」「元町サンセット通り」など神戸ゆかりの曲を多く発表。2005年からは毎春、神戸市で行われる震災復興チャリティーフェス「カミングコウベ」(昨年は中止、今年の日程は未定)に出演し、長年、大トリを務めてきた。

 それだけに、震災から26年を経ての初参加は意外だった。理由を知りたくて取材を申し込み、実現した今春、いきなりの“告白”にメモを取るペンが止まった。

 「バンドを始めた頃は、震災を早く風化させたいと思って歌っていました」

       ◇

 震災で自宅は半壊し、避難所暮らしを強いられた。つらい思い出を忘れるためにのめり込んだのが、バンド活動だったという。

 前田さんは、“告白”に続ける形で、こう話した。「嫌な思い出って、忘れた方がいいことだってあるじゃないですか」

 転機が訪れたのは、カミングコウベ(当時はゴーイングコウベ)に初出演する2年前の03年。長田区であったイベント後に、地元でまちづくり活動をする同世代の若者たちと居酒屋で酒を酌み交わした時のことだ。

 それまで、生まれ育った神戸を前面に出すような活動については、「震災で商売をしている」ように感じられて否定的だった。だが、若者らの「長田の未来を思う真剣さ」に触れ、「神戸のために歌ってみようか」と思うようになったという。

       ◇

 その後、徐々に震災関連イベントに参加するようになった。震災からの復興に向けて取り組む人たちの思いも、素直に受け止めることができるようになったという。

 「長田」をテーマにした曲やイベントを多く手がけてきた。出身は須磨(区)だが、隣の長田(区)は、父親が鉄工所を営んでいた場所でもあり、幼い頃から関わりが深い町だった。

 09年にリリースしたアルバムの中に、「NAGATOWN」という歌がある。

 ♪震災で崩れる長田の街を見ながら僕は感じたんだ

 世の中の不公平を

 いろんな所を上がってる火の手を見て僕は思った

 これは火災の火ではなく

 本当の心の炎だ

 風化させたいと思っていた震災への心境の変化を感じさせる部分もある。

 ♪いろんな事がある毎日を愛していくそれが生きていく理由だ

 心の炎絶やす事はなく夢と街と人を愛していこう

 この人生は一度きりなんだ

 育った街や自分を肯定していこう

 前田さんは思春期の頃、父親に反発し、父親が働く長田という町そのものにも嫌気がさした時期があった。だが、時間を経て、その考えは、震災復興への思いとも重なる形で、父親を含む周囲の人や町への感謝に変わる。

 そんな自分を肯定する「決意」が、この歌には込められているという。

       ◇

 最後に、一番聞きたかった質問を投げかけた。「なぜ、今年、初めて東遊園地に向かったのですか」

 前田さんはしばらく考え込んだ後、こう答えた。

 「ようやく、自然と足を運ぶことができた、ということかな」

 長い時間をかけて、自然と心が動いたタイミングだったのだろう。そして、その後に出てきた言葉に、被災地発のバンドとしての活動を、さらに期待したい思いが強まった。

 「あの空間に立ち、改めて心から感じました。震災を風化させてはいけない、と」

取材後記

遺志継ぐ同世代

 取材後、思い出した言葉がある。カミングコウベの実行委員会理事長を務め、一昨年に39歳で亡くなった松原裕さんの「震災直後は何もしなかった。フェスを始めたのは罪悪感からかな」。前田さんと似ている、と感じた。前田さんは、松原さんの遺志を継ぎ、今後もステージから歌声を届け続けるだろう。会場に行き、思いに応えたい。同世代の一人として。(清家俊生 44歳)

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使い方
1990968 0 「あゆみ~1.17から」 2021/04/17 05:00:00 2021/04/17 05:00:00 2021/04/17 05:00:00 神戸を中心に全国で活躍するコザック前田さん(10日)=八木良樹撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210416-OYTAI50015-T.jpg?type=thumbnail

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