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書斎の鍵 父が遺した「人生の奇跡」 喜多川泰著

 ちょっとした文章や台詞せりふにじんとくる。新型コロナウイルス禍の今こそ、そんな経験を求めたい。外出自粛の窮屈さで渇いた心に、本や映画で潤いを――。様々な分野で活躍する県内の人々に、「この一冊」「この一本」を聞く。

小林書店店主 小林由美子さん 72

 本との出会いの楽しさや、読書習慣をつけることの素晴らしさを伝える自己啓発小説です。明快で、感動を与えてくれる。近い将来、社会に出る高校生や大学生にぜひ読んでほしい。

 物語の舞台は、2055年。電子書籍が当たり前となっている中、あえて紙の本で書斎の本棚を埋める父への反発から、主人公は本を読まずに育ちます。しかし、父の死を機に、閉じられたままの書斎の鍵を探すことになり、物語が動き出します。

 この本で私が好きなのは、「人を幸せにするために本を読む」という考え方です。

 「知識や論理的な思考力をつけるため」。読書の目的をそんなふうに言ってみても、本嫌いには響きにくいもの。ですが、本は無限の広がりを持つ小宇宙であり、自分と異なる考えや世界観に触れられます。

 人を幸せにするとは、他者を理解し、受け入れること。だから読書をするのだ――。そう著者は説きます。

 交通事故で利き手に障害を負い、それを人生がうまくいかないことの言い訳にしてきた主人公も、鍵探しを通じてある本を手にします。その一冊のお陰で人生に成功した人たちとも出会い、変わっていきます。

 私は、涙なしに読めません。本に救われる経験は、私にもあるからです。

 私が店主の「小林書店」は、尼崎市立花町にある小さな本屋です。ほぼ70年前に両親が開業し、広さは10坪にも満たないほどです。

 阪神大震災では、自宅兼店舗が半壊しました。多額の借金を抱え、「本の利益だけでは生き残れない」と傘の販売にも力を入れ、何とか乗り切りました。

 大手のように新刊や話題書を思ったように入荷するのは難しくとも、料理や童話などの「全集」に特化し、その売り上げが全国上位になったこともあります。

 今は「いい話の図書館」と銘打った独自の取り組みもしています。お薦めの本に私がメッセージやエッセーを添え、お店の会員向けに定期宅配するというもので、好評をいただいています。

 苦境を乗り越えた経験は「まちの本屋」というドキュメンタリー映画でも紹介されましたが、以前は経営の危機で心底落ち込む度に、むさぼるように本に浸りました。そうすることで心を落ち着け、ヒントを得ることもありました。

 幼少期から本に囲まれて過ごしてきた私は幸運でしたが、そうでなくとも、言葉に救われた経験がある人はきっと多いでしょう。皆さんもより多くの良書に出会い、人生を豊かにしていってほしいと願っています。

(児玉圭太、随時掲載)

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2028570 0 巣籠りライブラリー ~私のイチオシ 2021/05/04 05:00:00 2021/05/04 05:00:00 2021/05/04 05:00:00 「私の一冊」小林書店店主、小林由美子さん https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210503-OYTAI50012-T.jpg?type=thumbnail

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