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<番外編>成長しなきゃ 生ける屍

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アニメ「ゾンビランドサガ」境 宗久監督

 ゾンビは、多くの映画で不気味なうめき声をあげ、生者に襲いかかるモンスターとして描かれます。元々は西インド諸島に伝わる民間信仰の秘術でした。これがトーキー映画の黎明れいめい期に題材となり、世界中に広まりました。

ゾンビのメンバーは特殊メイクで人間に扮(ふん)し、アイドル活動を続ける(c)ゾンビランドサガ製作委員会(c)ゾンビランドサガリベンジ製作委員会
ゾンビのメンバーは特殊メイクで人間に扮(ふん)し、アイドル活動を続ける(c)ゾンビランドサガ製作委員会(c)ゾンビランドサガリベンジ製作委員会

 当初は、呪術者の指示に従う奴隷のような描かれ方でした。それが、ホラー映画の影響で、先のイメージが定着したようです。さて、このアニメ作品。なぜかゾンビの女の子たちがアイドルグループを結成し、佐賀県を盛り上げようと奮闘します。

 いろんな「?」が浮かぶでしょう。昨今のゾンビブームを取材した昨夏、本作がインターネット利用者を対象にした2018年の人気投票で1位になったことを知り、ネット配信で「シーズン1」を鑑賞しました。全12話。第1話の冒頭数分で、アイドルを目指す主人公の女子高校生が、ある事情で亡くなってしまいます。

ゾンビとして目覚める主人公(左)と謎のアイドルプロデューサー(c)ゾンビランドサガ製作委員会(c)ゾンビランドサガリベンジ製作委員会
ゾンビとして目覚める主人公(左)と謎のアイドルプロデューサー(c)ゾンビランドサガ製作委員会(c)ゾンビランドサガリベンジ製作委員会

 主人公はゾンビとして目を覚まし、彼女を蘇生させた謎のアイドルプロデューサーから、「ご当地アイドルとして佐賀を盛り上げろ」と告げられます。かつて一世を風靡ふうびしたアイドルや天才子役、伝説の花魁おいらん……。主人公と同様、一方的に蘇生させられたメンバーらとグループを結成し、言われるままに活動を始めます。

 メンバーはゾンビだと気づかれないよう、完璧な特殊メイクで人間にふんします。路上ライブやファンとの撮影会を開いたり、ご当地イベントでPRしたり。ゾンビゆえに、首がもげてしまいます。でも、すぐにくっつきます。テンションの高いギャグとバカバカしい展開が続きます。

シーズン2となる「ゾンビランドサガ リベンジ」(c)ゾンビランドサガ製作委員会(c)ゾンビランドサガリベンジ製作委員会
シーズン2となる「ゾンビランドサガ リベンジ」(c)ゾンビランドサガ製作委員会(c)ゾンビランドサガリベンジ製作委員会

 何が面白いのか。そう思う人もいるでしょう。ですが、メンバーの生前が描かれる後半から、幾度も胸が熱くなります。人々は彼女らがゾンビだとは思いません。ですが生前の彼女らを知る人もいます。交錯する生者と死者の思い。そして視聴者は、彼女らこそ、死という究極の不条理を経験した存在だと気づかされるのです。

 こうしたサイドストーリーを挟みつつ、様々な失敗を乗り越え、成長するグループが描かれます。まるで、何度倒されても立ち上がり、生者にしぶとく襲いかかるホラー映画のゾンビのように。終盤には「お前の方こそ、生けるしかばねになっていないか」と問われているような気さえしてきます。この構成が素晴らしい。

 全話を見終えた後、作品への印象ががらりと変わると思います。なぜ佐賀県なのか、などという要素は二の次。でも物語の世界を超え、実際に佐賀県ではファンがロケ地などを巡る「聖地巡礼」が起こっています。現在、毎週木曜深夜のサンテレビで続編「シーズン2」が放映中で、「シーズン1」もアマゾンプライムビデオなどのネット配信で視聴できます。(冨野洋平)

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2120552 0 巣籠りライブラリー ~私のイチオシ 2021/06/13 05:00:00 2021/06/13 05:00:00 2021/06/13 05:00:00 (c)ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210612-OYTAI50042-T.jpg?type=thumbnail

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