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「香住沖海戦」犠牲者悼む碑

海に向かって立つ鎮魂碑。今西さんは「我々の世代が語りつがないと、忘れ去られてしまう」(香美町香住区で)
海に向かって立つ鎮魂碑。今西さんは「我々の世代が語りつがないと、忘れ去られてしまう」(香美町香住区で)

 そそり立つ岩壁に向かって穏やかに波が打ち寄せる真夏の日本海。美しい海岸を一望する香美町の高台に、終戦前日の海戦を今に伝える鎮魂の碑がひっそりと立っている。旧日本海軍の海防艦と米軍潜水艦がまみえた「香住沖海戦」から76年。終戦前日に起きた悲劇を語りつぐように、無言の いしぶみ が青い静かな海原をみつめている。

     ◇

 1945年8月14日。

 香住沖約6キロの日本海で、輸送船の護衛などに就いていた海防艦2隻が米軍潜水艦の魚雷攻撃を受けて沈没し、乗員50人以上の命が夏の海に散った。沈みゆく船影は陸地からも確認ができたという。それでも、地元の漁師らによる懸命の救助で350人を超える乗員が生還した。

 潜水艦から放たれた魚雷は漁港近くの島も直撃。助け出された乗員たちは香住国民学校(現在の香住小学校)の講堂に収容された。開戦から4年近く、それまで直接的な戦禍が及ばなかった小さな港町は騒然となった。

 当時、国民学校に通う6年生で、助け出された人たちの搬送に携わった守山康博さん(87)(新温泉町)は「……思い出したくないけれど、そろそろ最後の機会になりそうなので」と重い口を開く。

 「運ばれてきた人たちは『苦しい、苦しい』とうめいていた。終戦がもう1日早ければ、命を落とすことはなかったのに……」とつぶやく。

     ◇

 戦火がやんで30年あまりが過ぎ、戦没者の三十三回忌にあたる77年。1人の漁業者が供養を続けていたことがきっかけとなり、あの海を望む公園に香住青年会議所(JC)が中心になって碑を建立した。

 それから44年。

 かつてJC理事長を務めた今西康喜さん(49)は「海戦に関心を持つことができたのは、鎮魂碑のおかげ」と振り返る。

 小学生の頃から歴史が好きだったが、日本の近現代史に興味を覚えることはなかった。海戦についても地元ではあまり語られず、その事実を知ったのは2001年にJCに加わり、慰霊祭に携わるようになってからだった。

 「ふるさとの海で起こった出来事を、もっと知りたい」

 乗員や遺族、助け出した漁業者たちの話に耳を傾けて、その内容をブログで発信した。「(香住は)命をつないでくれた地。ありがとう」。命がけで救助や看護に当たった香住の先人に感謝する元乗員に出会うこともできた。

     ◇

 一方で、戦争を体験した世代が年を重ね、一人二人と亡くなっていく現実を目の当たりにし、「戦争を知らない世代が次につながなければ、記憶が忘れ去られてしまう」。

 そんな思いに突き動かされるように、10年ほど前から、小学校で自分の思いを子どもたちに話すようになった。活動は後輩らに引き継がれ、この夏も地元の小・中学校3校で平和学習の教材として活用された。

 今西さんから引き継いだ現メンバーの島崎貢さん(37)も当時を知る人への聞き取りを重ね、子どもたちに語りかける内容を充実させてきた。JCでの活動は40歳まで。「あと数年。バトンをつなぐために、後輩たちにしっかり伝えていきたい」と力を込める。

 今月1日、新型コロナウイルス禍の下、規模を縮小して慰霊の法要が営まれた。惨事を語り継ぐ意義とは何か。鎮魂碑を背に、海を見つめながら、今西さんは話した。

 「なぜ戦争が起きたのか、戦争をしない方法はあったのか。歴史を知り、学ぶことが平和につながるのではないでしょうか」

      (熊谷暢聡)

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2285390 0 物言わぬ 語り部たち 戦後76年 2021/08/15 05:00:00 2021/08/15 05:00:00 2021/08/15 05:00:00 海に向かって立つ鎮魂碑。今西さんは「我々の世代が語り次がないと、忘れ去られてしまう」と話す(香美町香住区で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210814-OYTAI50024-T.jpg?type=thumbnail

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