かつみ・さゆり 苦労 笑いに

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夫婦漫才コンビ「かつみ・さゆり」のかつみ(右)とさゆり(大阪市北区で)=杉本昌大撮影
夫婦漫才コンビ「かつみ・さゆり」のかつみ(右)とさゆり(大阪市北区で)=杉本昌大撮影
メリケンパーク(神戸市中央区)で楽しんだ2人の初デート=吉本興業提供
メリケンパーク(神戸市中央区)で楽しんだ2人の初デート=吉本興業提供
2009年の選抜高校野球大会で、かつみの母校・箕島(和歌山)を応援する2人。初デートでも高校野球は話題になったとか
2009年の選抜高校野球大会で、かつみの母校・箕島(和歌山)を応援する2人。初デートでも高校野球は話題になったとか

夫婦漫才コンビ

 いつしか独りに慣れていませんか。感染防止のためにと、人とのつながりをつい避けがちです。それでも気づいているはずです。誰かの「大丈夫」のひと言があれば、ぐっと前を向けることに。上り坂も下り坂も、心を通わせて乗り越えてきた家族や地域の支え合いをつづります。

 髪飾りを引っ張り、「ボヨヨ~ン」のおなじみのギャグ。夫婦漫才コンビのかつみ・さゆりの2人は借金もネタにする飛びきりの明るさで、笑いを届けてきた。

 さゆり(52)は神戸市長田区出身。19歳でかつみ(58)に出会った。初デートはメリケンパーク。株取引で1億円以上の借金を抱えていたのに、「こんな夢がある」と明るく話す姿にひかれた。「この人は今が人生のどん底。ここからきっと上がっていくとついて行ったんです。でも、底なしやった」と笑う。

 オオクワガタの繁殖失敗、電気やガスを止められた話など、借金のエピソードを笑いに変えてきた。最高約2億5000万円まで膨らんだ借金は今、約1億7000万円。山あり谷ありの日々を手を取り合い、銀婚式を昨年迎えた。

 お互いのことを、さゆりは「失敗する度、『これで厄落とせた』と超プラス思考。すごい引っ張り上げてもらった」、かつみは「出会えたことがラッキー。こんな恵まれた人生ない」と感謝を口にする。

 コロナ禍で仕事は激減したが、逆境は慣れっこ。かつみは「大金持ちでも、あれがないと感じたら不幸になる。僕は『奥さんがいる』『命がある』と、あることを考えるんでいつも幸せ」と語り、さゆりもうなずく。

 実は、2人を強く結びつけたことの一つに阪神大震災がある。番組の副賞でもらったパリ旅行中だった。ホテルでテレビをつけると、神戸の火災の映像が流れた。すぐ帰国し、長田区の実家へ。家族は無事だったが、自宅は全壊し、さゆりの部屋の被害が一番ひどかった。

 婚前旅行に猛反対したさゆりの父は、初対面のかつみに「よう連れ出してくれた。命の恩人や」。かつみは思わず「さゆりさんをください」と伝え、初めてプロポーズ。父は「君、今そんな場合ちゃうねん」と返したという。

 2人は「明日はどうなるか分からず、今日という日の大事さが身にしみた」としみじみ語る。「大事な人が生きているだけで十分」と、ささいな口げんかにも幸せを感じるようになった。

 借金まみれの2人の人生に一筋の光明が見えてきた。ユーチューブのチャンネルは、さゆりの美容法を紹介する動画が好評で、総再生回数は1000万回を超える。かつみが7年前に200万円で購入した謎の芸術家バンクシーの作品も20倍以上に高騰中だ。

 漫才で人をハッピーにしてきた2人。「ボヨヨ~ン」のギャグは、過酷なロケに挑むかつみをさゆりが手製のポンポンで応援していたことがきっかけで誕生。いわば夫婦愛のたまものだ。

 「出会ってから面白くも、もがいてばかりでしたが、生まれ変わっても一緒になりたい」。2人の深い絆がこれからどんな笑いを生み出すのか、目が離せない。(敬称略、西平大毅)

楽しいを今 喫茶しょうよう――夫と認知症の妻

「けんかはしたことがない。どなるとマスターは笑うから」と話す、すぎ原洋美さん(右)。寄り添う正典さんのまなざしは優しい(三木市志染町広野で)
「けんかはしたことがない。どなるとマスターは笑うから」と話す、すぎ原洋美さん(右)。寄り添う正典さんのまなざしは優しい(三木市志染町広野で)

 三木市の線路沿いにある喫茶店「しょうよう」で、店主の●(すぎ)原正典さん(72)と、妻の洋美さん(81)がコーヒーを入れる。洋美さんは約3年前、アルツハイマー型認知症と診断され、なじみ客の名前や顔が思い出せない。

 正典さん「コーヒーの入れ方を僕に繰り返し尋ねてくる。今は頭の働きが止まらないよう話しかけている」

 ――鹿児島出身の正典さんは、生後すぐに両親が離婚。16歳の冬、再婚した父に「家から出て」と言われて飛び出した。神戸市長田区の中華料理店で働いていた頃、同僚の洋美さんと出会った。

 洋美さん「年齢を聞かなかったので、結婚して初めて九つも年が離れているのが分かった。若い頃は楽しかったと思うけど忘れたわ」

 正典さん「ガス配送業に転じ、お母ちゃんも助手としてトラックのハンドルを握った。2人で必死だった。1995年、近くで喫茶店を始めた。昼間は配達、夜は喫茶店。日中はお母ちゃんが1人で店を守った」

 ――洋美さんの様子がおかしいと感じたのは10年近く前。元々お酒は好きだったが朝から酒を飲み、自宅のカギをかけ忘れた。洋美さんは否定するが、コーヒーの入れ方が思い出せないことがある。

 正典さん「お酒の適量が分からなくなったんだろう。代金を受け取らずに客を見送ったことも」

 ――近頃は午前2時に起きて畑仕事に出て、朝食を準備。デイサービスに向かう洋美さんを見送る。夕方から2人で店に立つ。

 洋美さん「人と話をするのが好きだから店は楽しいよ。マスターとは毎日一緒。でも、かわいそうよ。私にどなられて」

 ――二人三脚でここまでやってきた。

 正典さん「とにかくお母ちゃんがいてくれることが大事。今が一番楽しい。お母ちゃんは神様で、この出会いは宝くじに当たったようなもの」

 洋美さん「マスターは忘れないよ。どこに行くのも一緒。どうのこうの言わへん。私はこのままでいい」(近藤修史)

●は木へんに久

絆 再認識の機会に

 新型コロナウイルス禍での行動制限は、人と人の距離を遠ざける一方、オンラインツールによるコミュニケーションを促した。

 厚生労働省が2020年9月に実施したメンタルヘルス調査によると、47.9%が家族や親戚、友人らに会えないことをストレスに感じていた。

 また、アサヒビールが同年6月に実施した調査では、68.5%が「つながりや絆」を大切に感じたと回答。約8割はオンラインで絆を確認できるとしている。

 阪南大の武藤麻美・准教授(社会心理学)は「人との自然な接触が困難になったことで、独り暮らしの高齢者や学生らは孤独感を募らせた。一方で、周囲の支えを再認識する機会にもなった」と指摘。心の健康のために出来事を日記や手紙に書くなどし、気持ちを言葉にすることをすすめる。

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