絆が生んだ 希望の卵

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北坂養鶏場社長 北坂 勝さん(淡路市)

鶏舎にニワトリが戻り、卵を集め、笑顔を見せる北坂さん夫妻(淡路市で)
鶏舎にニワトリが戻り、卵を集め、笑顔を見せる北坂さん夫妻(淡路市で)
北坂養鶏場のロゴを手がけた森さん。北坂さんの生き方に感銘を受け、支援プロジェクトに取り組み始めた(洲本市で)
北坂養鶏場のロゴを手がけた森さん。北坂さんの生き方に感銘を受け、支援プロジェクトに取り組み始めた(洲本市で)
ニワトリの足の模様の滑り止めがついた軍手や箸置き、バッジなどのグッズ
ニワトリの足の模様の滑り止めがついた軍手や箸置き、バッジなどのグッズ

 播磨灘を望む高台にある淡路市の北坂養鶏場は先月、約2万6000羽のヒナを産卵用のケージに移す「引っ越し作業」に追われていた。3か月に1度のきつい業務の中にも従業員の笑い声が絶えない。そんな光景を見守りながら、社長の北坂勝さん(48)は「あっという間の1年だった」と感慨深い表情を浮かべた。

 忘れもしない。2020年11月25日。従業員からの電話に体が震えた。「1か所で数羽まとまって死んでいます」。毒性の強い高病原性の鳥インフルエンザ「H5N8亜型」だった。14万羽余りを殺処分――。島内に衝撃が走った。

 現場の対応に追われる中、北坂さんは妻の由紀さん(45)や従業員とともに顧客に謝罪して回り、直売所では消費者に説明した。コロナ禍に伴う経営難に追い打ちをかける事態に、当時は「やめたい」という思いもよぎった。

       ◇

 専門学校を卒業してUターン後、父が急逝して家業を継ぐ。33歳だった。「地域に開かれた養鶏場に」と、新鮮な卵の直売所を敷地内にオープン。遠心分離器をつかった「たまごプリン」を発売したり、ヒヨコと触れ合うイベントを開催したり。“北坂ファン”がじわりと広がった。

 地元産業を盛り上げるマルシェに積極的に関わり、放置竹林を間伐して竹垣を作るプロジェクトや海の栄養不足を鶏ふんで補う漁協の実験に参加してきた。

 鳥インフルの発生は、これまで出会った人々との結びつきの強さを実感する機会となる。「おいしい卵、待ってますよ」。顧客らが励まし、差し入れを届けてくれた。ヒナを代わりに飼育してくれる市外の養鶏業者も現れたことで、昨年4月に県の営業再開許可が下りると、すぐに卵の出荷にこぎつけることができた。

 芸術家らによる支援プロジェクトも動き出した。ニワトリのぬいぐるみバッジ、足形の滑り止めが付いた軍手――。イメージアップのアイデア商品が直売所に並ぶ。約10年来のビジネスパートナーであるデザイナーで果樹園経営の森知宏さん(37)が呼び掛けた。「地域のために頑張ってきた人。今度は自分たちが支える番だ」

       ◇

 経営は回復しつつある。約40人の従業員は一人も解雇しないで乗り切ってきた。由紀さんも、北坂さんへの感謝の思いを口にする。「いつも外出ばかりで不満もあったが、この人すごいんや。こんなに多くの人に恵まれて」

 昨年11月、直売所には殺処分の様子など鳥インフルに関する写真20枚が掲示された。北坂さんや従業員でカメラマンの横山佳奈恵さん(33)らが撮影した養鶏場の1年だ。北坂さんは「ありのままを伝えたい。いろいろな人に助けられて今がある」と感謝の思いをかみ締めている。(加藤律郎)

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