熱中8年競技広めたい ゴールボール 山口凌河 選手23 ★暗闇の熱闘

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ゲーム形式の練習で投球を行う山口選手
ゲーム形式の練習で投球を行う山口選手
山口選手
山口選手

 「クワイエットプリーズ」「プレー!」。審判の合図と共に選手が動き出す。埼玉県所沢市の体育館に昨年11月、男女約10人が集まり、試合形式の練習を行った。その中で、球足が速く精度も高い投球が際立っていた。いかにも、野球経験者らしい。

 幼い頃から野球に打ち込み、明るく話し好きな性格もあって、中学2年の新チームでは捕手で主将を任された。甲子園を目指すため、父の母校・藤代高へ進むつもりだったが、翌3月、いつもの球を捕れないことで目の異常に気付いた。診断名は「レーベル遺伝性視神経症」。半年ほどで、視界は「目の前に曇りガラスがかかったような」状態になった。

 野球を奪われ、進学先を県立盲学校へ変更。部活見学で、鈴が中に入った音の出るボールを転がし合うゴールボールに出会った。当時から日本代表として活躍していた伊藤雅敏(37)が指導する運動部で、伊藤の投球の速さや迫力、コートを自在に動く様子を音と限りある視力で感じ、憧れた。「目が見えなくても世界で戦える」。パラ競技として独自に発展した点にもひかれ、入部を決めた。

 ほろ苦い思いが、やりがいを高めてくれることになる。その後、ゴールボールを始めたことを中学時代のチームメートに話すと、冷めた答えが返ってきた。「何それ、知らねえ」「球を転がすだけでしょ」――。自分も始めるまで全く知らなかった競技。改めて知名度の低さを痛感した。3年の夏、「一度やってみろよ」と3人を部活に誘った。

 水戸市にある盲学校で、両目を隠すアイシェードを着けて試合形式での練習を体験してもらった。3人はとっさにアイシェードを外したり、守備の中で自分の位置がわからなくなったりと大苦戦。徐々に感覚をつかむまで、「球が痛い」「暗闇が怖い」などと弱音を吐く始末だった。

 その夜、父の迎えで自宅のある取手市へ帰る車内で、3人は「野球よりも疲れた。これをやってるなんて、すげえな」とこぼした。奥深さを感じ取った様子に、競技や視覚障害の世界をわかってもらう喜びを感じた。ゴールボールの現実も可能性も教えてくれた原体験だ。

 卒業後、盲学校の仲間が一人また一人とコートを去っても熱中し続け、今年で8年。今やかつて師事した伊藤と日本代表の枠を争うまでになった。視力は今、光や人影の動きが感じられる程度。それでも、関彰商事に身を置きながら、業務として毎週のように講演活動を行うなど普及にも力を入れている。

 東京での開催は「知ってもらう大きなチャンス」と力を込める。「ルールなどを知ってもらえば、それが『すごい、楽しい』と思うきっかけになる。話を聞いたことがあったり、選手を知っていたりすれば、食いついて見てもらえる」。暗闇の熱闘に世界が注目してほしい。情熱を傾けるのは、そんな願いがあるからだ。(菊池結貴子)

位置宣言し練習制球磨く

 選手は両チーム3人。専用のアイシェードで目を隠し、視界は完全な暗闇だ。コートには3メートルごとのラインに糸とテープが貼られており、その凹凸を頼りに位置を確認する。投球と守備は原則、ゴールから6メートルの範囲内で行う。投球は相手ゴールに到達する前に、決められたエリアで2回バウンドさせる必要がある。

 バスケットボールほどの球の中に鈴が入っており、相手の足音や鈴の音でその軌道を予測し、手足や胸でゴールを守る。原則、1球ごとに攻守を交代。試合は12分ハーフの計24分だ。

 試合と違い、練習では制球を磨くため、「3から3に」といった具合に、投げる際の立ち位置と相手ゴールの狙う位置を1メートル単位で宣言する。本人は練習拠点の埼玉県所沢市で週に2~3度、必ず実施。さらに50センチほどの幅で置いた球の間を通したり、50センチ幅のクッションに当て続けたりといった個人練習を重ね、野球で培った球の速さに加え、制球力を身につけた。

 やまぐち・りょうが 取手市出身。市立藤代中、県立盲学校、東洋大学卒。関彰商事所属。2013年世界ユース選手権大会優勝、17、19年IBSAゴールボールアジアパシフィック選手権ではともに3位に入賞した。

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990973 0 懸ける ~KAKERU~ 2020/01/09 05:00:00 2020/01/09 05:00:00 2020/01/09 05:00:00 ゲーム形式の練習でゴールを狙う山口 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200108-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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