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コロナ禍に追い打ちをかけるように、ロシアのウクライナ侵略による原油・原材料高や安全保障環境の緊迫が、県内にも影を落としている。県民の代表として国政を担う参院議員に求められるものは何か。争点の現場から、課題の現状や解決の糸口を探る。
小松市にある高齢者施設には日課がある。夜勤帯に入る午後4時、5人ほどの職員が看護師の指導で、感染から身を守るガウンや手袋、ゴーグルの着脱訓練に臨んでいた。
職員約60人が交代で参加し、10日ほどで全員に一巡する。「反復して体に染みつかせる」(施設の幹部)のが狙いだ。
2年前に始めた着脱訓練が実を結んだのは、昨年8月。100歳代の入所者2人が新型コロナウイルスに感染した時のことだ。
地元保健所に求められたのは、施設内での療養だった。当時、変異株「デルタ株」が県内に広がっていた。
施設は看護を担う職員を限定し、水分補給や経過観察を続けた。1週間たっても改善しなかったため、市内の病院に転院。その後、別の入所者2人が感染したが、さらなる感染拡大は封じ込めた。
施設幹部は「対策が役に立った」と振り返る。職員らは感染防護服の着脱訓練に加え、
国や県は今年2月以降、病院の負担を減らそうと、無症状や軽症の入所者を施設で療養する体制作りを進めた。国は療養に臨む施設への財政支援を増やし、県は重症化した場合に救急医に相談できる電話窓口を創設した。県による施設向け説明会では、入所者の療養を経験した施設運営者の体験談を披露するなど、ノウハウの共有を図った。
いずれも、重症化しにくい変異株「オミクロン株」の特徴をとらえた対応だ。県関係者は「中等症や重症患者を受け入れる病院の負担軽減が狙いだった」と振り返る。
今後は、より重症度が高い変異株や、ワクチンが効かない変異株が出現する恐れもある。金沢大付属病院の谷内江昭宏副病院長は「海外の変異株の動向を見ながら、空港検疫の見直しなど速やかな対応が必要になる」という。
岸田首相は6月、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合し、「日本版CDC」を設ける方針を示した。「遅きに失した」(馳知事)と指摘される一方、組織の具体像は見えない。
谷内江副病院長は日本版CDCのあり方をこう訴える。「新たな感染症の急拡大に備え、学術的な視点から、海外の感染状況の情報収集や具体的な感染対策を検討する仕組みが求められる。政治的な判断からの独立性と一定の権限を確保するべきだ」
国内で新型コロナの感染者が確認されてから2年半。医療機関と福祉施設、双方の現場で模索が続いている。