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    仮設住民 農園で元気に

    陸前高田 医師奔走、11団地に開設

    • 住民に混じって草取りをする高橋さん(左から3人目)(6日、陸前高田市米崎町で)
      住民に混じって草取りをする高橋さん(左から3人目)(6日、陸前高田市米崎町で)

     陸前高田市の仮設団地近くに、地元の言葉で「お入りなさい」を意味する「はまらっせん農園」がある。農園は市内の11仮設団地にあり、住民計約60人が汗を流し、輪を広げている。入居者の心と健康を改善しようと始めた県立高田病院医師の高橋祥さん(40)は、今日も畑を回り、被災者と笑顔で言葉を交わしている。(安田信介)

     ぽかぽかと春らしい陽気になった6日午後、同市米崎町の高台にある佐野仮設団地隣にある農園で、野良着姿の女性たちと高橋さんが談笑していた。

     「先生の分の畑、耕しといたからね」

     「最近、なかなか来られなくてさ」

     「だから、この仮設に入れでば(入りなさいよ)」

     約1500平方メートルの畑を4メートル四方に区切り、11人の住民が好きな作物を育てている。仮設に入居後、知り合いもおらず、震災後に亡くなった夫の遺影を眺めて泣いてばかりいたという佐々木トモ子さん(71)の区画では、タマネギやジャガイモが育つ。「友達ができたし、健康にも良い。とれたての野菜を食べる楽しみもできた」と笑顔だ。

     高橋さんは、北海道千歳市出身。震災前は北海道内の病院に勤務し、米国の大学病院に研究留学が内定していた。しかし、震災直後に被災地で医師が足りないという情報を知り、「このまま留学したら後悔する」と一念発起。縁もゆかりもない沿岸被災地の病院を訪問し、2011年9月、専門の内視鏡検査ができる医師がいなかった高田病院に就職した。

     昨年春、竹駒町の仮設団地の住民が近くの畑を借りて耕し、元気いっぱいだったのを見たことで、「他の仮設でもやれるのでは」と農園を作ることを思いついた。病院に企画案を出し、市内の全仮設団地に電話や文書で「畑をやりませんか」と誘った。休日を使って農園用の土地を探し、休耕地を見つけると地主に借用を頼んだ。泊まり込みで交渉したこともある。奔走した結果、全53仮設団地のうち11団地で農園を作ることができた。

     昨年1年間、農園に参加した住民を検査したところ、骨密度が改善していたほか、アンケート調査では「生活充実感」「生きる意欲」などが向上していた。

     2年目の今年は、農園同士で作物などの情報共有や、外部との交流を増やしていきたいという。参加者の9割が女性で男性が少ないことから、「農園のほかに生きがいを感じられる取り組みも考えたい」と話す。「生きたい」という気持ちを持たせるのが医療の根本、との思いからだ。病院と農園を走り回る日々は、これからも続く。

    2013年05月11日 00時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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