(上)生む 漆掻き 手厚い研修制度

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樹皮に傷を付け、漆液を採取する岡田さん。木選びや傷の付け方一つで採れる量や質が異なってくる(10月26日、二戸市で)
樹皮に傷を付け、漆液を採取する岡田さん。木選びや傷の付け方一つで採れる量や質が異なってくる(10月26日、二戸市で)

 文化庁は、今年度から国宝と重要文化財の修復に原則、国産漆を使用する方針に転じた。国産漆の約7割を生産する県内では、増産や漆製品の普及拡大に向けた取り組みが加速しているが、担い手の育成が課題となっている。転換期を迎えた漆産業の現場で奮闘する人々を追った。

 ◇10年で一人前

 10月26日、県産漆の生産量のほとんどを占める二戸市の漆林。市の地域おこし協力隊で漆き職人を目指す「うるしびと」の岡田裕さん(31)が、専用のカマとカンナを使い、樹皮に傷を付ける。切り口からは漆液があふれ出し、「この原木は漆の出がいいな」とつぶやく。一滴もこぼさないよう、ヘラを使って丁寧に木の容器に入れた。

 漆は掻く人の技術によって、品質や採れる量が格段に違う。木選びから樹皮の傷つけ方、漆液を採取するスピードなどが重要で、一人前になるには10年はかかるとされる。「この人の採った漆液じゃないと使わない」と職人を指名して購入する人もいるほどだ。

 花巻市出身の岡田さんは、3月までニュージーランドにいた。ワーキングホリデーで自動車の修理工をしていたが、期間満了を機に岩手に戻って働きたいと考えていた。元々細かい仕事や寺社を見るのが好きだった。「日本の伝統技術に携わる仕事がしたい」とネットで見つけたのが、地域おこし協力隊員の募集広告だった。

 6月に採用されると、道具の作り方から漆掻きの技術まで一から学んだ。掻きの技術はまだまだだが、「まずは量を掻くことが求められている。その期待に応えたい」と語る。

 ◇6人を採用

 二戸市には半世紀前、約300人の職人がいたが、高齢で次々引退し、なり手も少なくなった。現在は10分の1の30人。市は、今後の漆の需要増に対応するためには、40人が必要と試算。職人育成のため、2016年度から地域おこし協力隊制度を活用し、漆掻きの技術を学ぶ「うるしびと」の採用を始めた。

 うるしびとの任期は最長3年間。二戸に住み、夏は漆掻き、冬は漆を保管するたる作りや漆器作りを学ぶ。市は職人の協力を得て、研修用ビデオの製作を進めるなど技術習得を助ける。

 うるしびとは現在、岡田さんを含め6人。北海道から沖縄までの30~50歳代で、元会社員や元農家など経歴も様々だ。研修を終え、独り立ちできれば晴れて職人となる。

 岡田さんは「職人が不足する中で、若い掻き手が増えるのは楽しみ。早く一人前になれるよう技術を磨きたい」と意欲を見せる。市は、うるしびとが将来も二戸にとどまってくれることを期待する。「二戸に定住してもらうことで、職人を育てていける環境が整う」(担当者)からだ。

無断転載禁止
52477 0 うるわしの人々 2018/12/06 05:00:00 2018/12/06 05:00:00 原木から漆を掻ききる「裏目掻き」を行う岡田さん(26日午前11時58分、二戸市上斗米で)=斉藤新撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181205-OYTAI50011-T.jpg?type=thumbnail

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