(中)作る 職人 惜しまず技伝授

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 ◇塗り指導30年 

 1983年に設立された八幡平市の「安代漆工技術研究センター」は、漆器の「塗り師」を養成する施設だ。冨士原ふじわら文隆さん(62)は設立当初から30年以上にわたって指導を続けている。

 実習室では、4人の研修生が漆の塗られた木の板に向かい、木炭のかけらを使って表面を研ぐ作業に没頭していた。漆塗りに必要な工程で、研磨を続けるうちにつやが出てくる。「ここは木目に沿ってやった方がいい」「漆の厚みが一定になるように注意して」。冨士原さんは、4人が研いだ板を手に取り、的確にアドバイスする。

 元絵付師で、研修2年目の高橋沙紀さん(28)は「初めて『塗り』という漆の現場に触れ、楽しくてしょうがない」と目を輝かせる。工房を構えるのが夢で、「地元に昔からあるものを作り続け、漆文化を残していきたい」という。

 冨士原さんは、18歳で漆の世界に入り、盛岡市の県工業試験場(現県工業技術センター)で学び塗り師となった。主に指導者の道を歩んできたが、30歳代後半に「さらに技術を磨きたい」と東京芸術大の研修生となり、半年間、漆を勉強し直した。

 センターでは、2年間の研修で即戦力となる塗り師を育成する。「将来漆で食べていける人を育てる」のがモットーだ。これまで巣立った修了生は67人に上り、半数以上は県内の漆工房など、今も漆に関わる仕事に就いている。

 冨士原さんは「若い人たちは柔軟な発想を持っている。それを形にするための技術を教えたい」と語り、これからも後進の育成に力を入れていく。

カンナを使い、木地を削っていく長畝さん(洋野町で)
カンナを使い、木地を削っていく長畝さん(洋野町で)

 ◇公務員の肩書で

 洋野町の「佐々木工芸」の作業場。長畝ながうね崇さん(35)が、回転するろくろに取り付けられた材木にカンナを当てた。ブロック状の材木は下書きの線に沿って丸みを帯び、おわんの形が現れた。「力を入れ過ぎると必要以上に削れてしまう。加減が難しい」。ミリ単位の精密さが求められる仕事だけに、神経を使う。

 長畝さんは、漆器のもととなる木地を作る木地師の卵。青森県で福祉系のNPO法人に勤めていたが、すぐに結果が見える仕事がしたいと思うようになった。「手作業でものを作る仕事はどうだろう」と職探しを始め、たまたま読んだ新聞記事で木地師を知った。

 現在は二戸市の臨時職員という肩書を持ち、佐々木工芸で修業を積んでいる。二戸には長らく木地師がおらず、塗り師は洋野町や茨城県の職人が作った木地を使っている。市は漆の採取から木地製作、塗りまでの工程を地元で完結させ、効率的な漆器の生産体制を確立させたいと考えている。

 長畝さんは以前、1個の木地を作るのに20分ほどかかっていたが、今では5分ほどでできるようになった。「まずは自分が一人前になり、後に続く人が増えて漆文化が活性化するとうれしい」。修業を終えるのは2年後。その時、二戸で戦後初めての木地師が誕生する。

無断転載禁止
54651 0 うるわしの人々 2018/12/08 05:00:00 2018/12/08 05:00:00 カンナを使い木地を削っていく長畝さん(30日午後1時58分、洋野町大野の佐々木工芸で)=斉藤新撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181217-OYTAI50016-T.jpg?type=thumbnail

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