苦難の日々古里が応援 ◇恩返し

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野球イベントで子どもたちから握手攻めにあう雄星。「プロの世界で活躍することで、夢を身近に感じてもらいたい」(9日、盛岡市で)
野球イベントで子どもたちから握手攻めにあう雄星。「プロの世界で活躍することで、夢を身近に感じてもらいたい」(9日、盛岡市で)

 今月2日、今シーズンを終えた菊池雄星は岩手にいた。

 母校・花巻東高そばの体育館で行われた野球教室。参加した小中学生356人を前に、投球フォームの手本を示しながらアドバイスをする。最後に「野球を続けていれば必ず伸びる時が来る。信じて練習してほしい」と投げかけると、球児たちは大きくうなずいた。

 自身が重ねてきた経験から出た言葉だけに、重みがある。

 6球団からドラフト1位指名され、西武に入団した。鳴り物入りでスタートを切ったプロ生活だったが、苦難の連続だった。

 度重なるケガに悩まされ、フォームも迷走した。二軍生活は長引き、甲子園で154キロをたたき出した生命線の直球は140キロ台まで落ちた。

 苦悩はテレビ画面を通じて同級生にも伝わった。小中高校でバッテリーを組んだ千葉祐輔(27)は「フォームがころころ変わり、試行錯誤しているなと感じた」と証言する。

 挫折は子どもの頃から何度も経験した。だが、今度はなかなかトンネルの出口が見えない。念願の2桁勝利を達成したのは2016年。プロ入りから7年近くがたっていた。高校時代から米大リーグ志向だったが、雄星は「一軍で生き残ることに必死で、とても口に出せる状況ではなかった」と回想する。

 そんな苦しい時代を支えてくれたのは、やはり岩手の人々だった。

 小中高校のチームメート、多々野元太(27)は高校卒業後、仙台市の大学に進学。雄星が楽天戦で仙台を訪れるたびに球場へ足を運んだ。「心のよりどころになれば」とシーズンオフには雄星の自主トレに同行し、学生時代の楽しかった思い出話をした。

 同級生ゆえ、周囲から雄星の話題を振られることもある。「雄星調子いいじゃん」と言われると、自分のことのようにうれしかった。

 「いい時も悪い時も岩手の人たちは変わらず応援してくれた」。だから雄星には古里へ恩返しがしたいという思いが強い。

 プロ入り後は毎年帰省し、県内で野球教室やトークショーを開いている。自分には才能がないとプロ入りを諦めてほかの仕事を目指した時期があったこと、プロ入り後にケガに悩んで涙したこと――。講演では、これまで味わった苦労を正直に話すようにしている。「どんな仕事を選んでも楽なことなんてない。好きなことで苦しんでほしい」「人より苦しい思いをした方が勝った時の喜びは倍増する」

 その言葉は球児たちにも確かに届いている。花巻市のスポーツ少年団でプレーする鈴木聖悠せいゆう(11)は「雄星投手もはじめから上手なわけではなかったと聞き、勇気をもらった」と声を弾ませる。雄星が在籍した「盛岡東リトルシニア」主将の大川(14)は「対戦相手を敬う姿勢に憧れた。雄星さんが果たせなかった甲子園優勝旗を岩手に持ち帰りたい」と目を輝かせた。

 雄星は16日、ポスティングシステムを利用した米大リーグ移籍を目指し、米国へ向かった。各球団との交渉は続いており、間もなく朗報が届けられるはずだ。「これからも結果を出して岩手で活動を続け、少しでも恩返しがしたい」。岩手の“星”は海を渡るが、いつまでも古里を照らし続ける。(敬称略)

(徳山喜翔が担当しました)

無断転載禁止
55557 0 大リーグの星へ 2018/12/20 05:00:00 2018/12/20 05:00:00 野球イベントで児童に握手を求められる菊池雄星。「プロの世界で活躍することで、夢を身近に感じてもらいたい」(12月9日午後1時28分、盛岡市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181221-OYTAI50009-T.jpg?type=thumbnail

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