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(2)誘致の熱 県境越えず

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「東北ILC推進協議会」の総会で壇上に並ぶ達増知事(左から3人目)や村井嘉浩・宮城県知事(同2人目)ら(2013年4月、仙台市で)
「東北ILC推進協議会」の総会で壇上に並ぶ達増知事(左から3人目)や村井嘉浩・宮城県知事(同2人目)ら(2013年4月、仙台市で)

 県内で盛んな国際リニアコライダー(ILC)の誘致活動は、源流をたどると、衆参両院で議員を務めた県選出の椎名素夫氏(1930~2007年)に行き着く。

ILCの誘致活動に携わった椎名素夫氏(1995年8月撮影)
ILCの誘致活動に携わった椎名素夫氏(1995年8月撮影)

 高エネルギー物理学研究所(茨城県、現・高エネルギー加速器研究機構)所長だった菅原寛孝氏(82)は1990年代前半、参院議員会館に赴いて椎名氏に陳情した。「日本で直線型加速器の計画を進めています。日本中で行った地盤調査の結果、北上山地は有力な候補地であるとわかりました」

 当時、米国で建設が始まった加速器に対抗して、日本でも独自の加速器を造る計画が水面下であった。実現に向けて菅原氏が頼ったのは、名古屋大の物理学科で学び、国際情勢にも精通していた椎名氏だった。「科学技術振興だけでなく、地域振興や外交にも効果絶大だ。全面的に協力する」。椎名氏の答えは、非常に前向きだった。

 こうした動きは、91~95年に知事を務めた工藤巌氏の耳に入り、県も「科学技術振興室」を設置、誘致活動を本格的に始めた。椎名氏も99年に加速器の勉強会を作り、自らが理事長を務める調査研究機関「国際経済政策調査会」(東京)に事務局を置いた。

 県内で誘致活動が始まってから、30年近い月日が流れた。ILC計画自体は一朝一夕には進まなかったが、誘致に向けた盛り上がりは、決してしぼんではいない。

 ただ、活動を「広がり」という面でとらえると、物足りなさは否めない。ひとたび県境を南に越えると、「熱」はぐっと冷える。

 奥州市と一関市の地下が候補地となっているILCのトンネルは、当初は南端が宮城県にかかる予定だった。だが、2017年の計画変更で、長さは31キロから20キロに縮まり、同県にはかからなくなった。

 もっとも、ILCができたとしても、外国人研究者らは県内ではなく仙台に居着くのでは、と見る向きも多い。そうなれば誘致の「うまみ」は少なくなる。宮城県内のある首長は「恩恵を受けるのは、岩手の建設業者と仙台、それにILCに電気を送る東北電力くらいでは」とみる。

 宮城県を巻き込めば、誘致活動は勢いを増すかもしれない。だが、同県の産学界が熱い視線を注ぐのは、仙台市の東北大青葉山キャンパスに今年着工した「次世代放射光施設」だ。運用開始は23年度の予定。新素材や薬品開発など幅広い分野への応用が見込まれ、研究者や外国人材の定着が期待されている。

 実際の誘致交渉を担う肝心要の政府も、「本気度」はいまいちだ。

 文部科学省が9月29日に発表した21年度予算の概算要求は、仙台の次世代放射光施設に66億1200万円を充てたのに対し、ILC関連は前年度当初予算と同額の4億8000万円だった。このうち1億6000万円は高エネルギー加速器研究機構の運営費で、残る3億2000万円も、誘致活動ではなく、加速器の低コスト化を目指す米独仏との共同研究が対象だ。「コストをもっと下げろ」というメッセージにも読み取れる。

 「自民党が政権与党である限り、誘致は厳しい」という見方もある。巨額の財政支出を伴うだけに、「最後は首相官邸の判断だ」というのが関係者に共通する見立てだ。達増知事は野党の支持を受けるだけに、永田町からは、与党とは距離があると思われる。

 椎名氏が亡くなってから13年がたった。素粒子物理学の専門書を椎名氏から手渡された飯沢ただし県議(58)(一関選挙区)は「先生の夢を成し遂げたい」と力を込めるが、「与党の理解なしには誘致できない。自民党の人脈も使い、からめ手で活動すべきだ」と注文を付ける。

 県は昨年8月、ILC推進の担当部署を「室」から「局」に格上げし、今年度当初予算に推進費として1億円以上を盛り込んだ。椎名氏が生きていたら、どんなアドバイスを出すだろうか。

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1537017 0 ILCの実像 2020/10/04 05:00:00 2020/10/10 11:46:32 2020/10/10 11:46:32 壇上であいさつする里見総長(右から3人目)(26日、仙台市で)壇上であいさつする里見総長(右から3人目)と達増知事(同4人目)(26日、仙台市で)総会であいさつする東北大の里見学長(右から3人目)ら(26日、仙台市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201010-OYTAI50022-T.jpg?type=thumbnail

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