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自家農園の果実たっぷり
奥州市江刺地区で、及川由希子さん(46)が、家具職人でリンゴ農園を営む夫の健児さん(50)と開いた農園カフェ。看板メニューは当然、店の裏手の農園で収穫したリンゴを使ったアップルパイだ。
生地を押し上げるように、リンゴ1個分の果肉が詰まっている。かみしめた果肉からリンゴ本来の甘みが伝わり、食欲を刺激する。
もう一つの売りは、果汁100%のリンゴジュースだ。サンふじ、ジョナゴールド、王林など9品種から、自分で3品種を選べる「飲み比べ」がおすすめだ。品種によって味がこんなにも違うのかと思うほど、リンゴは実に個性的だと分かる。
2人は、仙台市の広告関連会社の元同僚で、2000年に結婚。健児さんは会社を辞め、長野で家具職人の修業を積んだ。その後、2人でグラフィックデザインの事務所兼家具工房を開こうと物件探しをしていた時、健児さんの父親が体調を崩したため、06年にこの地に移った。店は10年にオープン。木のぬくもりを感じる家具は、全て健児さんが隣の工房で作った。
由希子さんは当初、健児さんの家具をじっくりと見てもらうための「ギャラリーカフェ」にするつもりだった。その後、リンゴ園のカフェという特徴を前面に出したメニューに変更。秋から春先までの限定メニューだったアップルパイを夏にも提供できるよう、冷蔵設備を導入するという。
店名は、字の「水先」に英語のノートを加えた。ノートは、香水の特徴や楽器などの音色を表現する際にも使われる。農村の香りや鳥のさえずりを感じながら、カフェタイムを楽しんでほしいとの願いを込めた。
由希子さんは「江刺名産のリンゴの良さを知ってもらう『水先案内人』でありたい。店を続け、いつか江刺と言えば『ミズサキノート』と言ってもらえるようになりたい」と夢を語る。
景色もごちそう
この店の魅力は、広いガラス窓から見えるリンゴ園の景色だ。秋冬の実りの季節を迎えると、整然と並んだ木々には、赤や黄色に色づいたリンゴが鈴なりに。思わず時間を忘れるほど眺めてしまう。収穫後は少し寂しくなるが、雪が積もる今の季節は水墨画のようでまた楽しい。
「景色もごちそう」と言うけれど、心が動かされるような景色には、なかなか出会えないものだ。
メモ
看板メニューのアップルパイは税別600円、リンゴジュース・3品種飲み比べは同450円、由希子さんの友人が作った宮城県亘理町産のイチゴを使ったタルトは同650円。
住所は、奥州市江刺稲瀬水先595の2。東北自動車道「北上金ヶ崎IC」から車で約10分。営業は原則、木金土日の午前10時~午後5時。問い合わせは0197・35・8548へ。