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低地活用と安全を共に…新たな浸水想定に戸惑い

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日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震による津波浸水想定図。防潮堤破壊の場合、宮古湾に面する市街地地区は震災より浸水域が大きくなる(宮古市ホームページから)
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震による津波浸水想定図。防潮堤破壊の場合、宮古湾に面する市街地地区は震災より浸水域が大きくなる(宮古市ホームページから)
宮古市田老地区。住宅が点在するも、低地には未活用の空き地が目立つ(10日)
宮古市田老地区。住宅が点在するも、低地には未活用の空き地が目立つ(10日)

 「生まれ育った田老で生活がしたいと自宅を再建したが、近くに知り合いがいなくてさみしい」。空き地が目立つ低地に立つ自宅のそばで、一人暮らしの79歳女性は肩を落とす。

 震災で181人が犠牲となった宮古市田老地区。国道45号沿いに密集していた住宅は、震災後のまちづくりで、土地区画整理事業でかさ上げされた国道より西側の低地と、防災集団移転促進事業で整備された高台の二つのエリアに分かれた。

 高台の三王団地に整備された159の区画はすべて引き渡しが済み、現在は住宅がひしめき合っている。一方で、低地での土地の利活用は現在も進んでおらず、2019年度の市の目視調査によると、宅地利用は約4割と低迷。同様に土地区画整理事業が行われた鍬ヶ崎地区でも約6割が利用されているが、約4割が未利用のままだ。

 田老地区で津波の伝承活動を進めるNPO法人津波太郎の大棒秀一理事長(70)は「明治、昭和と田老は幾度の津波被害から立ち上がってきたが、今後はいかに子どもたちに『町残し』できるかの段階に入っている」と危機感を強める。市は、土地の活用を促すため、土地を売りたい人と買いたい人の情報を集めるサイトの開設などを含め、対策を検討しているが、有効な対策は見当たらないのが現状だ。

 これに加え、昨年、国から公表された日本海溝・千島海溝沿いで発生する巨大地震による津波想定が街づくりを足踏みさせかねない事態となっている。想定では、人が住まない場所だが、市内で最大29・7メートルの津波が襲うと予想。堤防が破壊された場合は、宮古湾に面した市街地地区で震災より浸水域が拡大し、津軽石地区では破壊されない場合でも拡大するとされた。

 市内では震災後、防潮堤のかさ上げや新設が行われてきたが、これまでの対策が否定されかねない新たな想定に住民らは戸惑いを隠せない。津軽石地区に住む69歳の農業の男性は「震災では被害がなかったが、浸水する想定だった。なんとかしなければと思うが、どうすればいいのか」と話す。

 新たな想定を受け、市は昨年10月に計7回の住民説明会を開催。ハザードマップの一部を更新し、避難訓練を実施するなど、ソフト面での対策を先行して実施してきた。県は今年度中に国の想定も踏まえ、県内の浸水区域の独自想定を公表する予定で、市はそれを受けて今後の対策を議論する方向だ。ハード面で何らかの対策を迫られる可能性もある。

 これについて、県東日本大震災津波復興委員会の総合企画専門委員長を務める岩手大の斎藤徳美名誉教授(地域防災学)は「国は想定は出すが、具体的な対策は公表しない。言ってしまえば、自治体に責任を転嫁したもの。自治体単独のハード面での対策は財政的に無理で、避難訓練や防災士の養成といった地道な啓発を重ねるしかないのではないか」と話す。

 新たな巨大地震に対する市民の安全・安心を確保し、震災後の街づくりをどう進めるのか。震災10年を機に、大きな問題が立ちはだかっている。

(この連載は有村瑞希が担当しました)

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2126815 0 宮古市の課題 ~市長選を前に~ 2021/06/16 05:00:00 2021/06/16 05:00:00 2021/06/16 05:00:00 宮古市街地地区の浸水想定図。赤は浸水高が5~10メートルの区域で、防潮堤が破壊された場合とそうでない場合で大きな違いが出ることがわかる(宮古市のホームページから) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210615-OYTAI50003-T.jpg?type=thumbnail

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