[東日本大震災11年 インタビュー](1)「生きた証」語り継ぐ 岩手大特命教授 麦倉哲さん 66

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犠牲者の当日や人柄記録

調査で分かった大槌町の震災犠牲者の当日の行動を記した地図を見返す麦倉さん(盛岡市の岩手大で)
調査で分かった大槌町の震災犠牲者の当日の行動を記した地図を見返す麦倉さん(盛岡市の岩手大で)

 東日本大震災後、大槌町の仮設住宅や災害公営住宅で暮らす被災者への聞き取り調査や、被災体験を語り合うサロン活動を続け、「心の復興」を支えてきた。昨年春に大学を定年退職した後も特命教授として活動を継続。「亡くなった人のことを語り継ぎ、震災を体験していない人に伝承することを文化として定着させる使命がある」と語る。

 2011年6月、避難所の運営状況を調査するため大槌町に入った。人口の1割弱の1286人が犠牲になった同町で、被災状況の聞き取りを始め、被災者の心のケアにも当たってきた。

 14年秋からは町の事業として、犠牲になった町民の生前の姿を記録する「生きた証プロジェクト」の聞き取り調査を行った。犠牲者の人柄や、震災当日の行動などを遺族や知人から聞き、震災の検証や風化防止に役立てるもので、約300人から話を聞いた。「被災や犠牲の事実と向き合って検証し、教訓を次世代に託すことを意識してきた」という。

 「生きた証」の活動を通じて災害の記録を続ける中、16年には自身が代表となって「語り継ぐ会」を設立し、大槌町や盛岡市で被災者同士が交流する「心の復興サロン」を80回ほど開いてきた。「自分の町の出来事を風化させずに伝承したい」と話す人がいる一方、家族を亡くした人が弱い立場になり、孤立してしまうケースにも接した。「社会が復興した今、想像もできない経験をした人に寄り添う場を設けることが重要」と強調する。

 震災後、沿岸市町村では人口減少に歯止めがかからない。大槌町でも震災前から人口が4000人以上減るなど、地域社会の維持が喫緊の課題となっている。都市部への人口流出を抑えるため、地方の主要産業である農業や漁業といった1次産業への支援や、移住者を受け入れる「地域おこし協力隊」制度の拡充など、「地方でも十分に暮らせる社会の設計を国が進めるべきだ」と語る。

 震災後に各地で整備された災害公営住宅では、収入基準を超えて家賃が上昇し、働き盛りの世代が退去する事例が出ている。「同じコミュニティーで暮らす子どもの成長を見守ることが、被災した高齢者の生きがいにもつながる」と、収入のある世帯も低家賃で暮らせる制度が必要と訴える。

 ハード面など目に見える復興が進む一方で、被災者の暮らし向きや、人とのつながりなど「心の復興」に向けた課題はまだ多い。特命教授の任期は今年度で終わるが、サロン活動は今後も続けていくつもりだ。「『多くの人が亡くなった寂れた町』ではなく、『多くの人が交流し、人々が引きつけられる町』にするため、知恵を絞っていきたい」と力を込める。

(黒山幹太)

 震災から11年。被災者の心や町並み、産業などの復興に関わってきた各界の人々にこれまでの道のりとこれからを聞いた。

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2820848 0 東日本大震災11年 インタビュー 2022/03/09 05:00:00 2022/03/09 05:00:00 2022/03/09 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/03/20220308-OYTAI50016-T.jpg?type=thumbnail

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