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2018年春、西和賀町の自営業瀬川
旧湯田町と旧沢内村が合併して誕生した同町では、05年の合併以降、人口が3割減少。今や住民約5000人の半数以上を高齢者が占める県内唯一の「限界自治体」だ。所有者が死亡したり、転居後に連絡がつかなかったりして、管理不全に陥っている空き家は中心部にも点在する。
町は当初、高額な費用などを理由に、行政代執行による空き家の解体に消極的だった。しかし、瀬川さんが地区の住民をまとめ上げて請願書を提出し、隣家は昨年7月にようやく撤去された。「このまま人口減、税収減が続けば、町の魅力は失われていくばかり。『西和賀で暮らしたい』と思う若者がどれだけいるのか」と瀬川さんは嘆く。
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県内の人口は1997年以降減少が続き、昨年、戦後初めて120万人を下回った。県内の出生数は過去約20年間で5割減り、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2045年には総人口が約88万人にまで落ち込むとされる。県はこれまで、
こうした流れを変えようと、県が望みを託すのが、コロナ禍で関心が高まった地方移住・定住の促進だ。内閣府が21年秋に東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の在住者を対象に行った調査では、地方移住に「関心がある」と答えた人は34%にのぼり、コロナ禍前より約9ポイント上昇。本県でも昨年度、県外からの移住者数は約1580人にのぼり、19年度比で3割増えた。
国や県は相次いで支援策を打ち出している。東京23区に在住・通勤する人が東京圏外に移住した場合、最大100万円が支給される国の「移住支援金」制度では、今年度から18歳未満の子供1人につき30万円が加算される。県でも7月、県外からの移住希望者を対象に、家電を備えた県営住宅を月1万円で貸し出す「いわてお試し居住体験事業」を始める。
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移住者からは制度のさらなる拡充を求める声が上がる。
東京都内でソフトウェア開発会社に勤めていた佐藤
ただ、移住には経済的負担も重く、「知人には勧めにくい」と佐藤さんは話す。国の移住支援金を活用した佐藤さんは、支援金の100万円を日頃の足となる軽乗用車や引っ越し代に使い切ったという。「生活拠点を完全に移すには、それ以上の自己資金が必要。給付額や対象を拡大しなければ、移住を後押しする材料にはなりにくい」と指摘する。
移住者の中には、地域になじめずに定住を断念する人もいる。岩泉町で移住者と町民の交流会を定期的に開いている漁師の金沢辰則さん(35)は「移住者を呼び込むだけでなく、住民との交流の場を設け、定着を支援する仕組み作りが必要だ」と訴える。
