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    絶景 感動が人を呼ぶ

    • カフェの前に立ち、「大串半島の眺めを楽しんでほしい」と語る野村さん(さぬき市で)
      カフェの前に立ち、「大串半島の眺めを楽しんでほしい」と語る野村さん(さぬき市で)

     ◇大串半島活性化に取り組む 野村精司さん57(さぬき市)

     瀬戸内海に突き出た、県内有数の景勝地・大串半島。その先端近くにある営業休止中のホテル「グリーンヒル大串」を市から無償で借り受け、2014年9月に再開した。〈アート〉をキーワードに展開を考えており、中のレストランを改装したカフェも同時にオープン。「日曜や祝日には100人以上がカフェを利用してくれている」と、手応えをつかんでいる。

     本業は、兵庫県西宮市の映像制作会社社長。11年11月、映画撮影のロケハンで半島を訪れ、魅了された。目の前に海が広がり、船が通り過ぎる。遠くには小豆島などの島々が望める。「瀬戸内でも屈指の眺望。絶対に人を呼び込めるはずだ」と直感した。

     ただ周辺では、公共交通機関は市のコミュニティーバスが1日に5本通るだけ。中心部から車で20分ほどかかる立地のせいか、人の姿はほとんどない。

     翌12年、市の公社が運営していたグリーンヒル大串は営業休止。その後、市が民間からアイデアを公募して、ホテルを含めた大串半島の活用策を考えると聞いた。映像を通じて地域活性化にも取り組んだ経験から、「あれだけの眺めを持つ絶好の場所。もっとにぎわいを生み出せるはず」と、真っ先に手を挙げた。

     映像や演劇、芸術作品の展示などにかかわってきた経験から、芸術活動の拠点構想に考えが至った。芸術家たちが泊まりがけでゆっくりと滞在しながら創作し、作品展示の場にもする。「海が見える場所で一息つけるように」と、カフェも設けることにした。

     ネックは、開業資金だった。一部は市が負担するとはいえ、リフォームの費用は膨大なものになる。考え悩んだ末、「家族の反対を押し切って」西宮市の一戸建ての自宅を売却し、当面の運営資金に充てた。

     「旅人の止まり木のような場所になってほしい」という意味を込め、カフェの名は「ノマドカフェ」と名付けた。英語で「遊牧民」の意味で、壁紙や照明を新しくして25席を設けたほか、旅人がくつろげる場をイメージして、ソファや旅の本などを置いた。地場野菜や果物を使ったカレーやスイーツが評判を呼ぶ。

     オープン年度、映像関係の収入と合わせても決算は約300万円の赤字。「楽ではないが、初期投資が大きかったので赤字は想定通り。3年で黒字にしたい」と表情は明るい。

     8月には、東京在住の絵本作家と協力して、子どもたちと一緒に絵を描き、読み聞かせをするイベントを開く。地元の音楽や演劇団体に利用してもらう計画や、近くのワイナリーと連携して、特産のカキとワインを味わうなど、アイデアは次々と湧き出す。

     だれもが感動してくれる豊かな自然が、大串半島の魅力だと確信している。ホテルのにぎわいは、まだこれからの課題だが、「食やアートをそこに加え、運営を軌道に乗せたい。来年の瀬戸内国際芸術祭とも連携したイベントができれば」。夢は、眼前の瀬戸内海のように広がる。(萩原大輔)

     ◆メモ 5町が合併して2002年に発足したさぬき市。1980年代後半から90年代にかけ、国の補助金を当て込んで、旧町が競い合うようにリゾート施設を開設した。いずれも経営は厳しく、市には維持費の負担が重くのしかかる。

     合併当時、6か所あった温泉施設のうち、旧寒川町にあったカメリア温泉は2008年に運営を民間へ委託。旧志度町の大串温泉は07年から休業したままとなっている。

    2015年07月08日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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