理科の実験 陰で支える

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「これからの子どもたちの役に立つ仕事をしたい」と話す角谷さん(高松市で)
「これからの子どもたちの役に立つ仕事をしたい」と話す角谷さん(高松市で)

 ◇顕微鏡修理会社代表 角谷 健三さん 69

 理科の実験などで誰しも一度はのぞいたことのある顕微鏡。どの学校にも置かれているが、5年もすればレンズにカビが生え、ピントもずれてしまいがちだ。

 「勉強する子どもたちにきちんとした環境を整えてあげたい」。その一念から、高松市香川町大野で全国でも珍しい顕微鏡修理専業の会社「西日本顕微鏡」を続け、47都道府県の学校の備品をピカピカに再生させている。受注先の学校は、2800校を超えた。

     ■     □

 「紆余うよ曲折の人生だった」。高松市出身で、詫間電波高専(現・香川高専詫間キャンパス)を卒業。いったん大手楽器メーカーに就職したが、父の工務店を手伝うために退社した。だが、大手住宅メーカーの攻勢もあって数年で廃業に追い込まれる。大きな負債を抱え、20歳代後半から30歳代にかけては、いくつもの仕事を掛け持ちして馬車馬のように働いた。

 心労がたたって大病を患ったが、療養先の病院でたまたま顕微鏡の修理業を営む男性と知り合ったのが転機となった。「ニッチ(すき間)な仕事が、妙に面白く感じられた」。引退を考えていた男性に頼み込み、ノウハウを引き継いだ。

 1984年、兄を誘って創業。四国を中心に西日本で順調に取引を増やした。ところが、まだ瀬戸大橋のない時代だ。泊まりがけの出張で親戚の死に目にも会えないことが続き、事業を兄に任せて、自分はサラリーマンに戻った。

 再び経営にタッチするようになったのは、兄が旅だった翌年の2004年のことだ。ちょうどその頃、手間がかかることから、各地の教材販売業者が顕微鏡のメンテナンスから手を引く例が多くなっていると聞いた。「うちが廃業すると、子どもたちが困ってしまうのではないか」。コツコツと営業を再開した。

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 メンテナンスは手仕事の連続だ。まず最初に顕微鏡をバラバラに分解。レンズ一枚一枚からカビや汚れを拭き取り、必要に応じて研磨もする。スライドガラスの抑えバネなど他のパーツも磨き上げたうえで組み立て、光軸などを調整して仕上げる。

 時代の変化で同業他社がほとんどいなくなった状況が、逆に追い風になった。11年から各地に代理店を設けたこともあり、顧客は東日本にもどんどん広がった。

 値段は児童・生徒用だと1台6000円~1万2000円ほど。買い替えるよりも格段に安く、リピーターも増えた。14年からは医療用顕微鏡のメンテナンスも担うようになり、顧客は全国の医療機関に広がった。

     ■    □

 スタッフは約10人に増え、昨年12月には社屋を一新した。だが、営利だけにこだわるつもりはない。

 「スタッフが一人前になるまでには、少なくとも5年はかかる。技術の継承にも力を入れ、子どもたちが楽しく学べる環境を守っていきたい」。いろいろ遠回りした人生だが、古希を迎え、もう迷いはない。(猪股和也)

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19365 0 人あり 2019/01/13 05:00:00 2019/01/21 13:30:05 「これからの子供たちの役に立つ仕事をしたい」と話す角谷さん(高松市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190112-OYTAI50011-T.jpg?type=thumbnail

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