読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

共に成長「一輪の花」交流

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

小説「二十四の瞳」 香川県小豆島町

内海湾の向こうに分教場のある半島が延びる(香川県小豆島町で)
内海湾の向こうに分教場のある半島が延びる(香川県小豆島町で)
岬の分教場(香川県小豆島町で)
岬の分教場(香川県小豆島町で)
教室には閉鎖当時の机やオルガンが残る(香川県小豆島町で)
教室には閉鎖当時の机やオルガンが残る(香川県小豆島町で)
「一輪の花」が収められた冊子を手にする藤本さん(高松市で)
「一輪の花」が収められた冊子を手にする藤本さん(高松市で)

 香川県内のある小学校6年生の男子児童は、勉強はできるが反抗的で友だちの輪に入らないなど気になる子どもだった。担任教諭は児童に一つの課題を与えた。「毎日、職員室の机に花を飾ってほしい」

 翌日から児童の職員室訪問が始まった。毎朝、タンポポやホトケノザなど通学途中に摘んできた野の花が小さな一輪挿しの瓶に飾られた。教諭は「おはよう」「ありがとう」と声をかけた。ほかの先生たちも「きれいやな」「がんばって続けているな」と温かい言葉を送った。

 ある日、瓶の下に小さな座布団のような布が敷かれていた。「先生の机が汚れるといけないから」と児童は笑顔を見せた。教諭は、児童の表情が明るくなってきたように感じた。友だちも増えた。叱責しっせきや命令ではなく、良さを認めるほめ言葉をかけられることで、気持ちが前向きになってきたのではないかと思った。児童は1年間、職員室通いを続けて卒業した。

 年月がって教諭は小学校の校長になり、間もなく退職という時、そのときの児童が教師を目指していることを知った。児童にあてた「一輪の花」と題した文章にし、同県の小豆島にある「岬の分教場保存会」が全国から募集した「先生からの手紙」コンクール(2013年)で最優秀賞に選ばれた。

 担任教諭は、当時高松市立栗林小学校校長だった藤本泰雄さん(67)(現・高松市教育長)。「手紙」の中で藤本さんはつづった。「教育(educate)とは語源的には、子どものいいところを引き出すことです」「一輪の花を毎日毎日、私の机に飾ってくれたあなたなら、きっと心からほめることができる親であり、教師である人間になってくれると信じています」

       ◆

 小豆島出身の作家・壺井栄の小説「二十四の瞳」は、時代や貧しさに翻弄ほんろうされていく児童と「大石先生」の心の交流を描いた物語。1954年に木下恵介監督、高峰秀子主演で初めて映画化されたとき、撮影が行われたのが小学校分校跡「岬の分教場」だ。管理する同保存会は、壺井を顕彰するためにエッセー作品や子どもらの絵画の募集を続けており、「先生からの手紙」の表彰式もここで行われた。

 藤本さん自身、分教場の本校である苗羽小学校で教頭として3年間勤務した。温かい地域の人々に支えられて過ごし、分教場にも子どもらとよく訪れた。「教え導くという大それたことはできなくても、深い愛情を持って子どもの気持ちに寄り添うことならできる」と、「二十四の瞳」は教えてくれていると思う。

 「一輪の花」の児童は今では子ども思いのベテラン教師になったそうだ。藤本さんは若い教師たちにエールを送る。「一人一人個性が違う子どもたちに、教え、教えられて、共に成長しながら一緒に歩んでいってほしい」(上田昌義)

       ◇

 「岬の分教場」は1902年に建てられた木造平屋の校舎で、3教室がある。「教員の原点」として訪れる先生ら、全国から年間6万人の来館者がある。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため6月4日まで臨時休業。状況によっては延長される可能性がある。

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2088545 0 四国 ストーリーズ 2021/05/31 05:00:00 2021/05/31 05:00:00 2021/05/31 05:00:00 大石先生の自宅近くとされる丘から望む岬の分教場(小豆島町西村で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210530-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)